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何か受信した(創作物)

 LokiDiaryから飛んできた人で見たくない人はくるっとターンしてください。



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「なぁ、エレメスよぅ」

 斧の尻柄を両の掌で下に向けて押さえつけながら、ハワードは大きく身をかがめた。自分の目線の、十メートルほど先にいるエレメスへと声をかけて身を起こす。
 かがむ、起こす。数度ほど屈伸したハワードは、ついで斧を右手に持ったまま腕で十字を組むようにして体をそらした。彼の体を、わずかながらの表面積ではあるが、一応肌を隠している白いシャツが体の隆起に伴って窮屈そうに伸び縮みしていた。

 元はまっさらだっただろうそのシャツは、わずかに油の色と赤黒い斑点が染み付いていた。普段、彼が生業としている武具の手入れのときについた油と、赤黒い斑点は、普段、彼が仕方なしに/嬉々としてやっている―――

「何でござるか」

 ハワードが声をかけてからきっかり十秒後。柱にもたれるようにして腕を組んでいたエレメスは、目を閉ざすように伏せていた瞼を少しだけ開いたハワードのほうを見やった。セシルに矢を打たれている原因のトップ5には入るであろう、いつも浮かべているへらへらした笑みは完全に鳴りを潜め、彼の表情は、一言で言うなら虚ろであった。気分が滅入って暗澹としているわけでもなく、何かの激情に駆られ怒っているわけでもない。

 ただただ虚ろに、彼らしからぬ/彼らしい虚無めいた面持ちを顔に浮かべてハワードのほうを見る。
 ハワードもその視線を受けてなおさほど顔色を崩さず、最後に一度だけ大きく屈伸をすると、エレメスの胴ほどの大きさはあろう大斧を片手で肩へと担いだ。

「今こんなときにいうのもあれかと思うけどよ」

 エレメスが柱から身を起こす。何も持っていなかった両手は、腕を崩して彼が一歩歩いた瞬間にまるで手品のように二振りのカタールを握り締めていた。四つの刃がそれぞれを蹴落とすかのように混ざり合い、下手を打てば所有者の指ごと切り落としかねない、そんな狂ったようなフォルム。それを普段使い慣れているナイフとフォークのように軽く数度振ると、エレメスはハワードの続きを促すように彼をついと見据えた。

 彼我の距離は、今動いたことにより八メートル。

 ハワードは、斧を腰だめに構え、

「オレ、実はお前のこと、大嫌いだったわ」

 声とともに、初めの一歩で二メートルを消し去った。

「何を言うかと思えば」

 ハワードが地を蹴ったと同時に、エレメスも反応していた。呆れるようにため息をついたかと思うと、すぐさまその体をハワードの構えよりさらに低く、低く、蛇が地を這うような格好で一歩を踏み込み、そのままハワードが二歩目を踏む前に三歩目を刻む。

 二人向き合い、一度も引かず。十メートルを数えた二人の距離は、たった一秒で二メートルへと磨り減らす。
 そして、二人の間に奔った戦慄を一息に打ち消す、エレメスの怒号が走った。

「あれだけ追い回されたいたのでござるよ。気づかないはずが―――ないだろう!」

 一瞬で両者とも間合いには入った二人は、それぞれ違う動作を取った。
 一撃を重視するハワードは突進力をそのまま踏み込みに変えて、大きく斧を握った右腕をしならせる。タイルへと踏み込んだ左足はあまりの突進力のせいで灰色の破片を撒き散らしながらタイルを踏み割り、振りかぶるためにのけぞった上半身は低く構えたエレメスへと照準を絞り、懇親の力で振り下ろした。

「はっ、それもそーだよ―――なァッ!」

 真下へとありえない推進力を得て大気を切り裂く鋼の斧は、かけ始めた姿勢のまま踏み込むことすらなく次の一歩を踏んでいたエレメスの体へと吸い込まれていく。完全な間合い、完全な死に体。いかなエレメスといえど、突進力、パワー、スピード、それら全てにおいて完璧といわざるを得ないハワードの一撃を避けれる体制ではなかった。
 だが、振り下ろしながらハワードは次の手を考える。これぐらいで殺せる相手ではないということを、いつもは背中を預ける戦友として骨の髄まで教え込まされているからだ。

 そして、ハワードの考えたとおり。エレメスはその一撃を避け切れなかった。否、避けることすらしなかった。
 秋の夜中に降る雨のように、エレメスは静かに低い体勢から左手だけを振り上げた。振り下ろされた斧の刃先に沿わすように、エレメスの左手のカタールが先を制す。カシッ、という、金属にあるまじき音を落ち葉が落ちる音より小さく響かせ、そんな最小の動きのはずなのに、内角へと切り込んでいたハワードの斧の軌道は外側へとずれた。ずれた角度は、外角へわずかに二度。けれど、どれをとっても完璧だといえたハワードの斬撃は、完璧過ぎたがためにその僅かなずれでさえエレメスを捕らえることは叶わなくなる。

 それどころか、

「っ、こ、んのっ! でたらめ野郎が……っ!」

 外へとずらしたカタールは左手に嵌められたもののみ。右手は未だ浮いたままで、彼我の距離はもう一メートルも満たない。
 一メートルも満たない距離に、エレメスがいる。いつもならば抱きしめてそのまま部屋へと拉致連衡しかねない、そんな距離。

 それは、エレメスにとっての絶対にはずすことはない、死の世界。
 首筋が粟立つのを感じ、ハワードはずらされた斧を無理やり内側へと食い込ませた。外へとそらされた物理エネルギーを、それを上回る肩力で僅かながらに内側へと導いたのだ。それがどれだけでたらめなことかは、力自慢で知られているハワードが両腕の筋肉を爆発的なまでに隆起させて無理をさせていることから判断がつく。

 右手をハワードの懐へと忍ばそうとしていたエレメスは、逸らしたはずの大斧が自分の矮躯へと迫っているのを風で察し、浮いていた左手を引き戻しながら右腕と合わせて、両の刃の部位で大斧を受け取めた。



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 俺が知りたいです、切実に(マテ
by Akira_Ikuya | 2006-12-15 00:00 | 二次創作


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