子供の落書き帳
2011-08-13T23:21:16+09:00
Akira_Ikuya
子供心のままに落書きを書き散らしていくブログ、の予定。遊戯王ch:#落書き遊戯王
Excite Blog
祭りも終わり。
http://yikuya.exblog.jp/14342934/
2011-08-13T23:20:00+09:00
2011-08-13T23:21:16+09:00
2011-08-13T23:20:12+09:00
Akira_Ikuya
リアル
今回のコミケですが、生まれて初めて、というわけじゃ(多分)ないと思いますが、他サークルさんのところへ買いに行ってきました。多分、初めてだと思います。今まで売り子してて友人に買ってきてもらったり、比村さんところとか、ネット巡回で見つけたサイトさんの本とかをメロンブックスで買ったりとかはしてましたが、リアの買い物にふらふらとついていった先で見つけた生体本や、ついったーで仲良くさせてもらってるところの本をこっそり(後で挨拶に行きましたが)買ったり、まさか1日目で出してると思わなかった好きなサークルさんを見つけて新刊セット買ったりとか。全然知らなかった既刊がずらりとあって、てんぱって「新刊セットください!」って叫んだはいいものの、つい今しがたその新刊セットを確認したら既刊の続編が一冊あって絶望してたりしてました。今度絶対既刊を書店で探す。早く気づけてたらよかったのにいいいい!
そんなこんなで。
売り手側じゃなくて、こうやって遊びにいくのもいいなぁ、とか思ったりした今回のコミケでした。でも、一日中買いまわる元気なんてないので、やっぱり僕はサークルでお客さんに本を手渡してるほうが多分いいのかなぁ、とも思いました、うん。
あ、それと、そろそろ某獅の字ペアはその強運を引っ込めればいいと思うな、うん。その強運俺によこしなさいよ!
最後になりましたが、皆さんありがとうございました、そして、お疲れ様でした。三日目も頑張る方は明日も頑張ってください。]]>
夏休みのメモ帳。
http://yikuya.exblog.jp/14322757/
2011-08-11T00:55:02+09:00
2011-08-11T00:54:59+09:00
2011-08-11T00:54:59+09:00
Akira_Ikuya
リアル
そして言うのをすっかり忘れてたんですが、実は明日から東京行きます。前日準備して当日も多分ちゃっかりスペースに居ると思います。ただ、お昼前まではちょっとふらついたりするかもしれません。もし俺を罵倒したいとかいう奇特な方がいらっしゃったら多分お昼過ぎぐらいからくるといいかもです。嘘です、会いにきてくださるなら普通の挨拶がいいです、罵声はイヤァア。
まりあの缶詰に着物着た変なにーちゃんがいたらたぶん俺です。石は投げないでください。
そんなこんなで、現在荷造り中です。
明日出発の土曜日の昼過ぎに東京出て大阪へ戻ります。そして月曜からまた普通にお仕事です。っていうか仕事の密度濃すぎてもう誰か助けてー! 何でこんな若造が業務分析とかしなきゃいけないんですかやだー!]]>
このブログの方向性。
http://yikuya.exblog.jp/13890259/
2011-06-25T22:34:45+09:00
2011-06-25T22:34:44+09:00
2011-06-25T22:34:44+09:00
Akira_Ikuya
リアル
今月になって更新分が全部小説という時点で大体想像つくと思ってますが、日常系の記事が書きたくなるまでは多分こんな感じで運用されてくと思います。いや、うん、だって、毎日家と現場の往復か、ヴァンガードしてるか、小説書いてるかぐらいの日常だもの、書くことが! ツイッターの文字数で済んじゃうぐらいの日常の淡白さなんです。
そして、今現在夏コミの原稿書いてるため、ちょっと連載分もストップ状態。本当はScene30は全部書きたかったんですが、結局間に合いませんでした。原稿終わったらぼちぼちと再開したいと思います。待ってる人皆無だとしても、正直dat以降は自己満足で始めたんだからぼちぼち書いてこう、うん。
そんなこんなでとりあえずの近況でした。珈琲でもいれよっと。]]>
Scene30 - 3
http://yikuya.exblog.jp/13807087/
2011-06-16T23:48:35+09:00
2011-06-16T23:48:28+09:00
2011-06-16T23:48:28+09:00
Akira_Ikuya
二次創作
そんなことで、そろそろ過去編も終わり。「彼女の右手は銀貨を放す」。
//
亜人たちの数が無限でなかったことを、まずは喜ぶべきだろう。年がら年中繁殖期である人類と違い、決まった季節にしか新たな生が生まれることはない種族なのでいつか底は尽きるだろうと思っていたが、よもや一年を越そうとは、現場の騎士兵、そして騎士団幹部を含め誰も想像がつかなかった。生誕からわずか三月もすれば槍を持ち前線に立つ亜人の種のスピードを甘く見たわけではないが、ちょうど繁殖期をまたいでの攻防になったせいでこの戦いの佳境を迎えるのに一年と二ヶ月をかけてしまった。
「……、ふ、はぁ」
だらしなく椅子の背もたれに背を預け、顔にぬれた手ぬぐいをかけて空を仰いだ。自身の長く流麗な菫色の髪は、今はだらしなく重力に従って背もたれの後ろで揺れている。ひんやりとした感触が心地よく、両目を閉じて僅かな休息をむさぼろうと、セニアはただひたすらに自堕落を追求しようとしていた。
「あー。あーあーあー」
ここ数ヶ月は死に物狂いだったため、若干頭の螺子が取れてしまったのかもしれない。新兵が見ればすわ新病かと疑いかねないようなうめき声のようなものを上げて、セニアは頭を揺れ動かした。そのたびに髪の毛がぶらぶらと波うち、今度は新病ではなく新たな魔物が闇から引きずり出されたのかと一刀に伏せられてもおかしくない光景が続く。王位第三継承者の肩書きも、プロンテラ騎士団副団長の名誉も、何もかもまとめてゴミ箱へ投げ捨てたかのような醜態であった。
さもありなん。この戦の間に十九の誕生日を迎え、この十九年間、ひたすらに剣を振るうか、王位継承者の端くれとして帝王学を学び続けた命である。僅かな息抜きもなく、休暇などはただの体のメンテナンス用の日と言う有様だった。それが故に、こうやって長い間にも及ぶ戦が終わりを迎えようとしている唐突な空白期間の過ごし方など、彼女は知る由もなかったのだから。
「……飽きた」
だが、それでもこの様はあんまりだろう。
彼女も今の自分の情景を思い描くだけの理性が残っていたのか、ヘッドダンシングを止めてぽつりと呟いた。誰もいないこの空間で少し戯れただけだ。後もう五分もしたら、詰め所を出て今日の最後のブリーフィングを行った後第五連隊へ指示を出して夜警と交代人員の発表を――――。
「何だ。もう終わりかい?」
「――――うぇっ!?」
素っ頓狂な声を上げて、思わずセニアの顔が跳ね起きた。手ぬぐいは空中をひらりと踊り、いきなり上体を越した反動か、椅子がぐらりと揺られてそのまま椅子から転げ落ちそうになる。慌てて机の上に両手を叩きつけて、倒れ転げた椅子から離脱した。
「ふっ、はははっ、何だ、セニア。急に」
「きゅ、急なのはセイレン様のほうじゃありませんかっ!」
空を舞っていた手ぬぐいがセイレンの眼前を泳いで足元に落ちる。その手ぬぐいを拾い上げて、セイレンは可笑しそうに笑みをこらえながらテーブルの方へやってきた。指揮官用の詰め所のため、セイレンがやって来てもなんら問題はないのだが、まだ修練場に出張っているとばかり思っていた。既に鎧を脱いで軽装になっていたセイレンを見るに、もう全ての業務を終えて戻ってきたのだろう。
先の醜態に対する恥ずかしさを隠し切れず、わたわたとしながらセニアは直立不動の体勢でセイレンと相対した。かちんこちんに固まったセニアを見やり、頷くように顎に手を添えた。
ここ一年と少し、常に自らの隣にいて、必死に頑張り続けてきた彼女の姿と、副団長となって初めて詰め所に訪れたときのように固まっている今の姿がどうしても重ならない。それでも、そのぶれが何故かとても愛らしくて、セイレンはくしゃりとセニアの髪に手を差し込む。セニアは突然のことに片目を閉じて、自分より幾分も背が高い彼を上目遣いで見上げた。
「……な、何ですか?」
「いや。何。セニアもそういうことを恥ずかしがるんだな、とね」
「あ、当たり前ですっ! というか、ですね、私だって、いつもあんなことをしてるわけじゃなくて、その、気が、緩んで」
「はは、そうか、そうだな。……よく、頑張っていたからな」
「セイレン様……?」
零れた言葉の色がやわらかくて、セニアは思わず彼の名を呼んだ。しかし、彼は言葉では返さずに彼女の頭を撫でる。前髪の隙間から彼の表情を見上げるも、いつもの優しい笑顔を浮かべているだけで表情の意図が読めない。セイレンの意図がわからず、しかし、彼の掌の感触が心地よくて、セニアはもっと撫でろと言わんばかりにセイレンに一歩近づいた。
その意図を察しているのかいないのか、セイレンはぽんぽんとセニアの頭を叩くと、彼女の髪を梳くようにして手を離した。セイレンの指に自身の髪が絡んでは離れていく様を、セニアは名残惜しげに見送った。
そして、自然と、言葉が口をついて出た。
「もう、終わりですか?」
はたと気づき、セニアは咄嗟に唇を押さえる。一瞬の自失の後に彼女を襲ったのは、先の醜態とは比べ物にならないほど大きな羞恥心だった。自分の言った言葉が、その意味が、何から何まで恥ずかしくて彼女はその場に俯いてしまう。とてもではないが、セイレンを見上げる勇気はもうなかった。
そして、呟きにしては大きくて、独り言にしては強烈な意味を持った言葉を受けたセイレンは、双眸を見開いて眼下の彼女を見下ろした。
「……」
一呼吸。セイレンは今の言葉を咀嚼するように天井を見上げ、再び顎に手を添えてセニアを見下ろし、ぽりぽりと頬を掻いた。よくよく見てみると、俯いているだけではなくてセニアの体が僅かに震えている。困ったなぁ、と、セイレンは胸中で一人ゴチた。女性のこういう仕草にはとことん縁のない生活を送ってきただけに、プレッシャーが自分の双肩にどんとのしかかる。縁談の話は家系上、毎日のように送られてくるものの、全部断ってきたのが仇となったか。未だに女性という寓話のような存在が、どうにも彼は苦手であった。胃が微かに悲鳴を上げて、きゅぅと喉が鳴るような錯覚を覚える。
それでも、この胃の痛さはいつもの業務に比べても、他の女性と接するときの苦しさよりも、何処か甘い感じがして。セイレンは、セニアに請われるがまま、再び彼女の頭に手を触れた。触れた瞬間、セニアの体が小さく跳ねたが、それでも構わずにセイレンは菫色の髪の毛をできるだけ乱さないように、優しく彼女に触れる。
「珍しいな。セニアが、そうやってねだるとは」
「ね、ねだった、わけじゃ」
「そうか? ……君がそう言うなら、そうなんだろう」
深く言及はせずに、セイレンはそうやって微笑んだ。セニアの頬に朱が射して、為されるがままに彼女はまた俯いた。
「それに、そうだな。考えてみれば、一度もないのかもしれないね。君が、そうやって私に言ってくれるのは」
「……え?」
「指南役として五年、この任務で一年。それだけ一緒にいたのに、何のお願いもされたことがないと、思い出してな」
十年ほど前に、指南役としてセニアに剣を教えるとなったときは、相手が相手なだけあって腫れ物に触るように接したことは記憶にある。そんなセイレンに対して、セニアは意に介さず、八歳の少女にしては不気味なほど落ち着いた佇まいで粛々と教わっていた。それから一年、二年と時が経つにつれて、セイレンは少しずつセニアに対して、一人の騎士見習いとして修練を見るようになった。
それでも、セニアは頑なにセイレンと距離を置き続け、ようやく笑みを見せたときは、もう指南役として最後の半年を切った時期だった。笑みを見せる、という、そんな単純な心の触れ合いでさえ四年半を費やしたのだ。何かをねだられることは勿論のこと、頼られることも、頼まれることも一度たりともなかった。
そのことが心残りではあったが、任を解かれてしまったが故に自分と彼女の距離は大きく開いてしまった。
いくら自分が名家の生まれとはいえ、相手は王族の第三子だ。おいそれと近づくことも、当然、話しかけることすらも周りが許さなかった。たまに剣の修練で鉢合わせ、彼女の面倒を見ることもあったが、騎士団の先輩、後輩、という立場が崩れなかった。
この一年間。彼女は笑みを見せるようになっていたし、様々な心の機微を伺うこともできた。人間として成熟し、騎士としても立派に成長を遂げていた。この防衛戦も戦果を上げ、当初は彼女の能力に疑問の声や妬みの眼差しを向けていた騎士兵たちも、今ではセニアのことを姫ではなく、副団長として尊敬の念と、一定以上の信頼を預けているのも、知っている。
それほどまでに成長していた彼女の姿を、彼は誰よりも嬉しく思っていた。教師と生徒、先輩と後輩、そして、上司と部下。一定の上下関係で、そしてセニアの成長を喜ばしく思うがあまりに、完全に失念してしまっていた。セイレンだからこそ、気づけなかったのかもしれない。
彼女が、誰にも甘えることも、助けを求めることができなくなっていたことを。
「君は、私の教え子であり、後輩であり、そして、部下だ。……そして、私の片腕であり、パートナーだ。だから、そうだな、こういうとき、どう言えばいいのかは、私も経験がないので、よくわからないが」
すっと腰を屈め、セニアの目線に合わせる。セニアは、セイレンの顔を、じっと見つめていた。
胃が引き絞られるような痛みを発したが、それでも構わず、セイレンはセニアの頭を撫でながら、言葉を続けた。
「私は、君を信頼している。君は、私に心を開いてはくれるかい?」
「わ、私、は……っ」
対するセニアは、即答ができなかった。
心を開いているか? 開いているに決まっている。心を開きたい相手だと、ずっとずっと思い続けていて、そして、ずっと慕ってきたのだ。その思慕の情を数えて十年だ。心を開いているに、決まっている。
それでも、セニアは答えることができなかった。返事をすることが、できなかった。
自分の心の中なのに、セニアはその気持ちを言葉にすることができない。感情を言葉にする術を、知らなかった。
王位第三継承者は、騎士団へと入団し、剣の道を修める。第一継承者は当然王の後を継ぐために帝王学を学び、王たる者としての教育を受ける。第二継承者は、第一継承者の後を追いすがりながらも、同等の教育を学び、同等の道を進む。第一継承者が敷かれたレールの上を踏み外した場合、滞りなくそのレールの上に乗せれるスペアとして。
そして、第三継承者は、そのレールの上に乗せられることもなく、王族の権力の誇示のために騎士団へと入る。昔は継承者たちを傀儡とした権力争いなどが激化したため全ての継承者に王位を継ぐ可能性が残されていたが、各国との争いすらなくなった現代で、そのような権力争いも鳴りを潜め、第四継承者以降は王位を望めない代わりに、それなりに自由な生活が与えられていた。
王の後が約束された第一継承者に、そのスペアである第二継承者。
誰からも期待をされないけれど、その後の人生の自由を約束された第四後継者以降。
その間に挟まれ、自由も未来も与えられず、ただ剣の道のみを与えられた第三継承者。
そんな自分に、感情など、思慕の情など、本来は不必要なものだったはずだった。こうして言葉にすらできない、伝えることすらできない感情ならば、要らなかった。必要だと思いたくすらなかった。
言葉が痞えて、その想いすら吐露できない。
この一年、セイレンに認められるために必死に足掻いてきた。それでも、結局その軌跡は、それまでの十八年間の軌跡の前に踏み潰されて、
「私はっ!」
「……急くな、セニア」
振り絞った声に、セイレンの声が優しく覆いかぶさる。気づけば俯いてしまっていた顔を上げると、そこには、先程までと寸分変わらない穏やかな顔をしたセイレンが待っていてくれていた。
「私は、君の言葉を待つよ。急かなくていい。いつか、君の言葉で。きちんと伝えてくれたらそれでいい」
自分の言葉がセニアを困らせていたと、気づいたのだろうか。
セイレンは、突き放したように聞こえないように、細心の注意を払いながら言葉を紡ぐ。
自分と同じぐらい不器用な部下が。自分よりも一生懸命な後輩が。自分よりも強く在ることを義務付けられた教え子が、その心に押しつぶされてしまわれないように。
「だから……そうか、そうだな。ああ、私は、こう言いたいんだ」
くしゃり、と、再びセニアの頭を撫でる。
セニアはむず痒そうに、甘えるように、セイレンの掌に擦り寄った。セイレンの掌が、セニアの頭から頬へと滑り落ちる。
「私は、君の困った顔を、見たくないんだ――――約束だ。そのためなら、どんなことでも、しよう」
びっくりしてセニアはセイレンを見やる。
セイレンは若干照れたように笑って、それでも、セイレンの笑顔はぎこちなかった。セニアの頬を撫でるセイレンの掌に、汗が滲んでいるのを感じる。――――ああ、彼も緊張していたんだ。そのことに気づいて、セニアは少し可笑しくなった。
「……そうです、か。ふふ、では、たまには困ってみることに、してみます」
「……はは、そうか。それは、困ったな」
急くな、と言ってもらえた。
いつか、と待ってもらえた。
どんなことでもしてくれると、約束してくれた。
そのことが嬉しくて、胸の底がふわふわするように暖かくて。
セニアは、セイレンに向けて、微笑んだ。
「ありがとう、ございます」
防衛の任務も終え、後は月に数度、事後処理といまだ現地に残っているバードナー第五師団師団長との話し合いや作戦会議に顔を出す程度となったセニアは、久しぶりに自らの居城へと帰ってきた。出陣のときは初夏だったというのに、季節は一回りをした上に、もう秋の風が吹いている。開け広げた廊下の窓から、鈴虫の音色が宵の風に乗せられて届いてきた。
久しぶりに心落ち着く夜だ。
セイレンに認められたあの日から、セニアは少しずつ心に余裕を持つことができた。一人の時間を落ち着いて過ごすことも増えたし、セイレンから勧められた本を少しずつ読み始めてもいる。
今夜は何をしよう。本の続きをきりのいい所まで読んでしまおうか。そう思いながら、自室へと歩いていると、ふと視線を感じた。隠れるわけでもなく、むしろ、こちらへ意図的に向けたような肌にぴりっとくる気配。僅かに、嘆息。足先の向きを変えて、廊下の突き当たりにある窓へと歩いていった。
コツコツと軍靴が鳴る。窓枠へたどり着き、足を止めたそのタイミングで。目の前の窓枠の下から、にゅっと片手が突き出された。
「……また来ていたのか」
「これでもお仕事だからね。久しぶり、で、おつとめごくろーさまです」
呆れるように言うセニアに、笑い声が帰ってくる。
窓枠にもたれるように手をかけて、窓から上体を投げ出す。窓枠の下に座り込んでいる、シーフの少女と目があった。にっと相手が笑う。
シーフという職業に就いているくせに、もはや城へ忍び込んでいるのを隠そうともしない彼女に、もはやセニアは怒る気も、咎める気も失くしていた。シーフの少女の笑みに微苦笑を返し、窓から流れてくる風に自身の長い菫色の髪を預ける。
今宵は風が気持ちいい。ここに留まる理由を、そう自分に納得させた。
「私がここに帰る度に貴女を見るが、それはたまたまなのか? それとも、滅多に帰ってこない私と遭遇するほど頻繁に、この城に忍び込んでいるのか?」
「これはこれは、何というお言葉を。愛しいお姫様に会いに来ております、って言ったら?」
「城内の警備をもっと厳しくするよう進言しておく」
「やめてよ、わたしの生命線なのに。ここ」
どれだけ警備に力を注いでも、到底掴まる気がなさそうではあるけれど。セニアのそんな心中の声を聞き取ったのか、少女はへらりと笑ってセニアの顔を見上げた。
「……ん、んんんー? おやおやぁ? なーんか、いい顔するようになったじゃん、セニア」
「……? そうか? 自分ではわからないが……これでも一年以上も指揮を執っていたんだ、少しは騎士らしい顔つきになれただろうか」
「あー、もう、違っ! 違う! どーしてそんな風に考えちゃうかなぁ!」
生真面目を通り越して滑稽にしか聞こえないセニアの返答に、少女は思わずうなり声を上げて否定した。その剣幕に押されたのか、鼻白むセニアに少女は即座に言葉を重ねる。
「わたしがそんなこと誉めると思うー? わ、た、し、が! もー。ホント、セニアって自分のことに疎いね。女の子の顔するようになった、って言ってるのにー」
「……女の子の、顔?」
「まったくもー……まだわかんないか、そっかぁ。ちょっと期待したんだけどな」
未だに釈然としていないセニアと、仕方ないなと言わんばかりに苦笑して空を見上げる少女。二人はしばし、秋風に身を任せた。普段から話しかけないセニアは元より、少女まで黙り込んでしまったので、二人の間に流れる音はリィンリィン、と、鳴く鈴虫の声だけだった。
それでも、その空間を、セニアは以前ほどは息苦しく感じなかった。セイレンよりも早く心を許していたこの少女が相手だから、というのもあるだろうが、それよりも、こういう時間の過ごし方を学べたということが、大きかったのだろう。
鈴虫が若干大きく鳴き始めた。
頭の後ろで組んでいた腕を解き、空からセニアへと、少女は視線を移す。急に目が合い、セニアは首をかしげて少女を見返した。
少女は、窓枠の真下から、窓枠の右壁に沿うようにして立ち上がる。
「……どうした?」
少女と目線の高さが同じになる。「もう帰るのか」という言葉を、セニアはすんでのところで飲み込んだ。
忍び込まれた側が言う台詞ではない。この城の主の一人として、何と言う体たらくか。
心中でそんなことをセニアが思っていることを知ってか知らずか。少女は、しっ、と小さく声を上げた。唇に添えられた少女の指に、セニアは訝しげに眉根を寄せる。天真爛漫な笑顔が似合ういつもの少女とは違う神妙な空気を纏った少女に、セニアは次の句が継げずに、ただ少女の指の感触がリアルに感じた。
「最近、少し外の様子がおかしいの。身辺に気をつけて」
「……外?」
少女の声は可聴ぎりぎりの音量だった。耳を澄ませなければ聞こえず、これならば中庭で今尚啼いている鈴虫の声のほうが余程大きい。
先の声と同じトーンで聞き返したセニアに、少女は小さく頷く。
「外。うちの系列でもまだわかんないみたいだけど、それだけになんかヤバい気がするんだよね」
うち。その単語が示すものは、シーフである彼女が属しているシーフギルドに他ならない。国から認められてはいるものの、その内実はとても陽にあたることはできない活動が多い。少女のように生きるために窃盗を働くことも厭わず、シーフギルドの派生ギルドに当たるアサシンギルドなどでは、国から容認されているにも関わらず、その活動項目から殺人という二文字が消えない。人の道に反するというのなら、国の認可など取り消してしまえばいいものの、もうずっと長い間それが放置されて罷り通っているというのだから、アサシンギルドの「上客」に属する身分の人間も簡単に想像がつく。
それが故に。様子がおかしい、と聞かされて、アサシンギルドが動き――――それをわざわざ伝えに来たということは、我が身への暗殺でも依頼として舞い込んだのかと思っていたけれど、どうやら、話はそうも単純ではなかったようだ。
「系列以外の組織のことも、わかるのか?」
「蛇の道はなんとやら、と言ってね。路地裏、地下道、果ては殺人現場から汚職広場まで。暗部はわたしたちのテリトリーなんだ。だからこそ、そこに何の義も通さずに入ってきたヤツがいたのなら、嫌でもわかるよ」
少女がぺろりと自身の唇を舐める。その様は、ぞっとするほどの色気を孕んでいて、セニアはたまっていた生唾を嚥下する。その音は、周りで鳴り響く鈴虫の声よりも遥かに小さいくせに、嫌に耳の奥に響いた。
「目的や、活動場所は?」
虫の声にかき消されそうな自分たちの会話を、セニアは聞き漏らさないように必死に拾う。
「不明。わかったら、『外』なんて言わないよ。うちの上部なら何か掴んでるのかもしれないけど、わたしみたいな下っ端はこれ以上はさっぱり」
セニアの中に、心当たりが一つぽつりと浮かび上がる。
しかし、あの話はもう半年以上も前だ。あれから調査員を数名向けてみたものの、何の報告も上がっていない。気にするだけ無駄だろうと思って、セニアは一つ頷いた。
「……そうか」
少女が自らに語ってくれた理由を察し、セニアは窓枠から身を引いた。そして、懐に手を突っ込み、軽装の内ポケットに仕舞い込んでいた財布から銀のコインをいくつか掴み、窓枠へと差し出した。
「目的も対象もわからない以上、騎士団は動かせないが、忠告は受け取った」
少女は差し出された銀貨とセニアの顔を二往復ほど見比べ、銀貨を受け取った。そして、やわやわと銀貨を指の腹で何度かこすりつけて、ピン、と、セニアの鼻っ面めがけて弾き返した。
急に飛んで帰って来たコインを空中で掴み取り、セニアは邪推の声を上げる。
「っ、急に何をする!」
「んー、や。わたし別に情報屋じゃないしね。ただのしがないコソドロだし? わたしみたいなのにそんな高価なコインなんて肌に合わないって」
「ならば尚のこと受け取ればいいだろう。一月は悪事を働かなくてよくなるだろうに」
「んー、それはそうなんだけど、ね」
壁から背を離して、少女はポニーテールを隠すように茶色のバンダナを頭に巻きなおした。目の前に立っているのに、すっと少女の気配が薄れる。目を凝らして、少女の後姿を見つめる。そんなセニアに、少女は振り返って笑いかけた。
「お金もらうために教えたって、思われたくないしね」
そう言って、壁に体をくっつける。
刹那、セニアが注視しているその最中に。彼女の気配は忽然と、中庭から消え去った。
「……まったく」
嘆息、一つ。中庭にはただ鈴虫が鳴いて、気持ちのいい夜風が吹いている。自分は今、その空間に誘われて窓へ来ただけ。そろそろ、自室へ戻ろう。セイレンから借り受けている本の続きを読もう。
――――『外』、か。
思い出すのは、半年以上前に一度だけセイレンから受けた報告。シュバルツバルト共和国との国境付近の川を越えて来た密入国者が数名いる、という、簡素な内容だった。あの付近には古から放置された荒城、グラストヘイムしかない上に、その後の報告すら上がってこなかったため気にしていなかったが、あの少女の言ってきた言葉に該当する自らの情報はそれしかなかった。
気にしすぎ、だろう。久しぶりに会えた少女との後味が、どうにも悪くなる。
開け広げていた窓を閉める。ごちる相手もいなくなったセニアは、菫色の髪の毛を翻し、窓枠から背を向けた。
ここへ来た時に通った廊下を歩きながら、行き場のなくなった銀貨を右手でこすり合わせるようにして弄ぶ。
そして、名残惜しげに一度、窓へと振り返った。
「私もできれば、悪事なんて働いてほしくはないのだが、な」]]>
Scene30 - 2
http://yikuya.exblog.jp/13753671/
2011-06-10T01:46:00+09:00
2011-06-11T01:52:17+09:00
2011-06-11T01:52:17+09:00
Akira_Ikuya
二次創作
4月から変わったプロジェクトで死んでたりで何かすっかりこっちに書かなくなりました。ツイッターも言うほど顔出してませんが、とりあえず何とか必死に生きてます。
コミケも無事当選したようで、その原稿も頑張っていかなきゃいけないところ。とりあえず、Scene30が全部終わったら原稿着手することにします、うん。今年の夏は現地にはいけない予感がしますが。
そんなわけで、Scene30のPart2。何かオリキャラが割りと全部もっていっちゃった感がある話です。
//
ルーンミッドガッツ王国の魔法学の心臓部にして、王国唯一と言っていい魔法学校『アカデミー』が存在する西方の都市、ゲフェン。英知の証として空高く聳え立つゲフェンタワーを象徴として、膨大な魔力と学術が眠り、そして、その魔なる力に引き寄せられる魔物たちの攻勢から日々脅威に晒されている都市でもあった。
そのゲフェンを防衛する箇所としては、大きく三箇所存在する。まず北方、ミョルニール山脈の麓に砦を築き、プティットやホーネットといった飛行種族との戦闘に特化した第一防衛拠点、そしてゲフェンより更に西方、西の果てに存在する古びた古城、グラストヘイムからあふれ出てくる死霊や悪霊を塞き止めるために存在する第二防衛拠点。最後に、プロンテラより南西に位置するオーク種族、ゴブリン種族と言った、対亜人種用に作られた第三拠点である。
プロンテラ騎士団に入団した者は、まずこのいずれかの防衛拠点に配属される。騎士団の業務として国防が大きなウェイトを占める以上、新人の育成として魔物への迎撃方法やチーム間での連携を取るにはうってつけであった。また、騎士として配属された以上、この防衛任務にはもうひとつ大きな意味がある。騎士として一人前として認められ、晴れて冒険者の仲間入りできるようになるのは、ここでの戦果を通じて、各師団を構成するいずれかの連隊長となることが必須条件なのである。経験を積み、リーダーとしての素質があると認められた者だけが隊長となり、そのまま騎士団に残って国のために尽くすか、一人前の冒険者として旅立つかの選択を選ぶことができる。騎士団として残る場合は連隊長から更に上の役職を目指し、後継者の育成、または騎士団の運営に携わっていく。
それ故に、それぞれに配属された騎士たちの士気は高い。そして、ゲフェンという都市が存在する以上、半永久的にそこの拠点には人が存在することになるので、物流や金の流れが発生する。それぞれの拠点を中心に、行商や武器商が出入りするのは常として、騎士の武具の修理、精錬のために鍛冶屋が工房を構えたり、その拠点に居ついて商売を始める者、あるいは現地で結婚し家族を作り、そこを自分の生活区域に変えてしまう騎士もいた。
それぞれ三つの防衛拠点は、ゲフェンを守る、という大義に加え、そこに集う人々全ての命をも守護する要塞という側面もあった。その砦が陥落するということは、ゲフェンへの直線通路が開くと同時に、何千もの命が巻き添えになるという現実が待ち受けている。
「……それぐらいのことは、私も入団時の座学で心得てます。今更何なんですか、もう」
「今から自分が指揮を執るんだ。少しのおさらいと思って聞いて起きなさい」
騎乗槍隊で構成された第五部隊師団を引き連れて先頭を駆るセイレン=テルフォードは、道すがらセニア=トリスタンに切々と今回の任務についての説明を続けていた。三箇所の防衛箇所については、騎士団入りしていの一番に教えられてそのまま現地へドナドナされていくため、防衛経験者ならば身に染みてわかっている。それでも、思考回路の約八割を心配、残りの二割を慎重という具合でブレンドされているセイレンにしてみればまだまだ語り足りないことが多いのだろう。ぼやくセニアをなだめて、ペコペコの手綱をピンと引っ張る。プロンテラから南へ抜けて西へ折れる平坦な野道に、ペコペコの啼く甲高い声が響き渡る。
「実際に剣をとって盾を持って戦うときでさえ、その戦地の背景や戦の経緯を知ることはとても大事なことだ。何のために戦うかを理解しなければ、騎士として、または隊の一人として戦うことができないからだ。そして、重ねて言うが、今から君はそこで指揮を執るんだ。そのためには、もう一度知っておいても損はないだろう?」
「……」
至極正論ではある。しかし、正論であることと、同意できることは通常得てして逆ケースのことが多いわけで。
セニアはセイレンにばれないように、吹き抜けてくる初夏の風に双眸を閉じる。ヘルムで覆い切れなかった菫色の後ろ髪がなびき、露になった耳に触れた風がくすぐったかった。
「……ニア、セニア。聞いているのか」
「あ、はい。聞いています。すみません、目にごみが入ったみたいで」
しれっと答えながら、セニアは数日前から行われていた作戦会議の内容を反芻する。
防衛拠点の損壊度はそう酷くはないが、現地の騎士たちの消耗が予想外に激しいらしい。ゲフェンへの直線状の距離は比較的他の砦に比べて短いのだが、その最短ルートはゲフェン南に広がる湖によって渡航不可になっているため、亜人たちの住処から東から北へと大きく迂回する必要がある。その二つの合流地点に設置してある拠点なので、二勢力によって争わせ、どちらかが撤退したときにこちらから出向いて叩く、というのが常套手段になっていた。しかし、最近はその戦術が通じなくなっており、二勢力は協力こそしないものの、一心不乱にこちらの砦に食いついてくるというのだ。弓兵、魔術兵などが合流している混成軍ではなく、純粋な騎士で構成されている関係で篭城戦はあまり得意ではない防衛部隊は、その突然の行動パターンの変化についていけず、結局要塞を背後にした防衛陣を組む結果となる。
基礎体力、身体能力で明らかに人類を凌駕する亜人たちに真っ向からの勝負を挑むなど正気の沙汰ではなかったが、それでも、冷静さの欠片もない亜人の攻撃はまだいくらかかわしようがあった。普段組んでいる突撃隊形もとらず、共闘もせず、乱戦もせず、まるで何かの香の導かれる虫のようにただひたすら突撃を繰り返す亜人たちは、御しやすいとともに、一種の狂気すら伺えた。
防衛拠点であるにも関わらず、篭城戦が苦手というのも変な話だが、騎士に成り立てものをメインに構成しているため仕方がないとも言えた。国防として防衛を担ってはいるものの、そこに他のギルドの人員が加わらないのは古い伝統に囚われている王族関係者が頑なに他ギルドの増援を拒んでいる、とセニアも小耳に挟んだことがある。同じ王族、しかも直系として申し訳ないと思う気持ちとともに、此度の防衛戦に負けられない理由が更に追加された。
「負けられませんね」
「ああ、そうだ。私たちが負ければ、後ろにいるのは武を持たない人々だ。私たちには、逃げ場も死場もない」
セニアが呟き、セイレンが重ねた。
セニアは後ろを振り返る。プロンテラ騎士団の正団章をつけた六個連隊からなる八十名の槍兵たち。百にも満たない騎士の数を、充分と見るか少ないと見るかは、自分の手腕にかかっている。これで後は、バックを固めてくれる弓兵や術兵がいてくれたら、色々とやりようはあるというのに。
「そして敵は死地を求めるがごとく突撃を繰り返す、でしたよね。……狙いさえもわからない攻城、本当に魔物の理というのが理解できません」
「これまではある程度攻防が続けば、奴らも退いて行ったんだがな……下手すれば、最後の一兵までも叩く必要があるかも知れないな」
亜人だろうが魔物だろうが、生ける者には当然のことながら種の生存本能が根底にある。いくらゲフェンに根付く魔の根源に誘われて侵略を続けても、引き際というリミット値が存在する。痛みわけ、と言うわけではないが、そうやって敵は撤退し、騎士団員は次の侵略までに英気を養い、訓練と修練を重ねる。
しかし、今回の侵略に関しては、敵に撤退の二文字が存在しない。延々と、何処から補充されているのかわからないぐらい敵が襲い掛かってくる。幸いにして活動時間には限界があるのか、もしくは単に夜は目が利かないのか、夜間における侵略はなかった。もし日夜問わず攻勢に出られていたら、とてもじゃないが要塞の維持だけで精一杯で、他のコロニーの防衛まで手が回らなかっただろう。
それを僥倖と見るか、それとも、そこまで追い詰められている現状に唇を噛むか。
「長く、なりそうだな」
セイレンの言葉に、セニアは神妙に頷いた。
自分たちの役職の都合上、そこにずっと留まることはできない。けれど、決戦はしばらく続く。おそらく月を挟んで、何度もここを往復する羽目になるだろう。いつかは見飽きるようになる景色になるかもしれないが、セニアは今はただ、視界の遥か先に見える森林とそこまで続くこの平原を、瞼の奥に焼き付けた。
「故に、かくあるべきだと、我輩は思うわけなんだよ。どう思うよ?」
「どう思うよ、と、言われましても……だからこうして我々が命張って守ってるんじゃないですか」
「まぁ、そらそうだわな。だが、我輩たちは悲しいことに命は一個しかねーわけでな。この要塞を守ってたら命を変わりに失うんだわ。いくら我輩でもそこは抗えん」
肩を越すほどの長さの三つ編みをふらふらと左右に振りながら、どうにもやる気のなさそうに言って彼はため息をこぼした。ため息をつきたいのはこちらだといわんばかりに、その後ろを歩く濃紫のマフラーを巻いた青年は肩を落とす。双方年はおそらく三十路は越えない程の青年なのだが、肩当には第五師団の証である槍と盾の団章が刻まれていた。三つ編みの青年の断章には、槍の上に金の冠が更に彫られていて、マフラーを巻いた青年には盾の上に銀の王冠のマークが刻み込まれている。
武器の上にある金の王冠は師団長の証。防具の上にある銀の王冠は副師団長の証。六個連隊計八十名で構成される第五師団の上に立つ二人は、その威厳も何処へやらと言わんばかりに適当なことを言い合いながら廊下を歩いていく。
「そもそもだな、確かに話には聞いていたが期間が長すぎるわ、期間が。半年だぞ? 我輩はここにきて誕生日を一度迎えてしまったわ」
「あ、そうだったんですか。おめでとうございます」
「祝辞はいらんよ、ちなみに君ら誰一人として我輩を祝わなかっただろう、当日に」
「いや、そんなこと言われましても……知りませんよ、団長の誕生日なんか」
本当にどうでもいいことを言い合っていると、廊下の反対側から同じ団章をつけた騎士たちがやってきた。三人組の騎士は二人の姿に気づくと、慌てて敬礼して横を通り過ぎていった。その背中に、「ごくろーさん」という気の抜けた声を送って、師団長は隣の副師団長へと振り返る。
「で。何の話だったかね」
「別に何かを目的として話していた覚えはありません。いつもの団長の愚痴です」
「愚痴か。愚痴は大切だと思うんだよ、我輩は。愚痴を言わなければこの職なんぞやってられん。それに何故か知らんが我輩がやるのはいつも何処かの拠点の留守番だ。愚痴の一つも出る」
留守番じゃなくて、篭城戦とか、防衛戦を任されてるんだけどなぁ……。師団長のあんまりといえばあんまりな言葉にさしもの副師団長も乾いた笑いがこぼれた。今までこの人の下について何度も防衛戦や篭城戦を繰り返し、中には死戦といっても差し支えのない修羅場をくぐってきた。その度その度に、騎士団から、あるいは、恐れ多いことにルシル王本人から勲章や褒章をいただいてきたというのに、ただの留守番としか思っていなかったのだろうか。授与するとき、妙にぼんやりとしていたり目の焦点があってなかったりしていたが、何故授与しているのかすら理解していなかったのか。
ああ、胃が痛い。まるで何処かの騎士団団長みたいなことを思いながら、マフラーに口元をうずめた。
「どうしたかね。ため息なぞついて。君も愚痴を言いたまえ。我輩はルーウェンスが愚痴を言うところをそういえば見たことがないぞ、ささ、遠慮なぞしないで言うがいい」
「いいです。私だって命が大切です」
「ふむ、そうかね。ああ、そうだ、我輩だって命が大事なのだよ。だからこそ、今回の戦はどうにかして切り抜けないといけないな」
話が原点に戻ったような、まだずれたままのような、ただの世間話のように第五師団団長、バードナー=マルゴットはトレードマークである金髪の三つ編みをくるくると指に絡ませながら思案に更ける。常にやる気のない緑の双眸にようやく理性の色が灯ったのを見届けて、ルーウェンス=カーシャスは妙に疲れた両肩をほぐすように窮屈な肩当の中でぐるりと回した。
戦巧者、バードナー=マルゴット。先の会話から本人は単なる留守番としか考えていなかったようだが、それでも騎士団団長であるセイレンを初め、この騎士団の中で作戦部に携わるものならば誰でも、彼のその防衛能力を高く買っていた。騎士兵以外の職を含むことを許さない騎士団の風潮が故に、どうしても防衛指揮や篭城戦などの難易度は高くなってしまう。選ぶ駒のレパートリーが少なければ少ないほど、やることが単調にならざるを得ず、騎士が故の高い突撃力を生かせない戦い方が不得手になってしまうのは仕方ないと言えた。
もちろん、バードナーが執る戦術も、結局はその騎士の戦い方の域を出ない。同じ兵、同じ戦術を執るのならば、後は全て下準備や兵站、実際の指揮行動の話になってしまう。彼が長けていたのは、兵の動かし方もさることながら、守勢から攻勢に出るタイミング、もっと極端な話で言えば、戦場の空気を読むことに非常に長けていた。本人曰く、「直感的」とのたまうのだから、どういう理屈や理論でその号令を出しているのかが彼以外誰にも理解できなかったのが玉に瑕ではあるものの、彼の号令タイミングが結果的に最良であることが今までの経験で裏づけされているため、第五師団の誰もが、彼の指示に背かない。
しかし、戦というのは決して、その当日の指揮だけで勝てるものではなく。そして、全てを直感的に、あるいは本能的に行ってしまうバードナーは当然兵站などについてはほとんどノータッチなわけで。バードナーが曲がりなりにも第五師団の師団長として慕われている裏側には、苦労人ルーウェンス=カーシャスの途方もない努力があることもまた、第五師団を含め騎士団上層部の誰もが知るところだった。
そして、その万能スキルを余すことなくフル活用しているルーウェンスが未だに彼の下で副師団長の枠に収まっているかというと。つまるところ、バードナーの指揮に魅了されてしまった一人なのであって。
バードナーが戦のことを考え、想定し、そして最も優れたルートを直感的に導き出す。その破天荒とも言える戦運びを間近で見て、心酔しない者などいないというのがルーウェンスの持論でもあった。
しかし、今回の戦は、バードナーが愚痴を言い始める程、自分たちは前線に出ていない。今回の戦の舞台に立っているのは自分たちではなくて。
「しかし、団長。今回は団長が指揮を執らずとも、何とかなっているじゃないですか」
ルーウェンスの言葉を受けて、バードナーは片目を開いてルーウェンスを見やる。
そしてもう片方の瞼の裏に映る光景。長い菫色の髪の毛に、蒼く光る騎士剣。まだ幼さが残る体躯に根付く負けん気と、意思の根底に息づく騎士としての熱さは誰にも負けていない。戦はまだ巧いとは言えないが、それでも、彼女のその気迫に押されて、我が隊の中でも異を唱える者もそういなかった。
あれで経験をつめば、おそらく戦に必要なものを全て一人でまかなえる人材になるのではないだろうか。そんなことを思い、バードナーはくつくつと口端で笑う。
「ん? ん、ああ。セニア嬢か。彼女もどうしてなかなか、よくやっているではないか」
「嬢って。相手が誰かわかってるんですか!?」
「どうしたね、ルーウェンス。マフラーがずり落ちているではないか。大事なんだろう? 夏でもつけているのだから」
「余計なお世話です、家訓なんです! いえ、だから、そうじゃなく! 私が言っているのはそうではなく!」
「ああ、煩いぞ、ルーウェンス。そんな大声を出さずとも我輩は聞こえている。セニア嬢がどうかしたのかね。ああ、何だ。ひょっとしてセニア嬢にほの字か? 何ぞ、また身分違いな道を往こうとするな。我輩はいいと思うぞ」
「あんた一回黙れ!」
飄々と、言えば聞こえがいいものの、まったくぶれない声音で淡々とからかわれるのは存外に精神的にくるようで、ルーウェンスの魂の絶叫はそれなりに大きなものになってしまった。廊下の向こうで雑談をしていた騎士兵二人がびっくりして、こちらを伺っている。それに気づいたルーウェンスは、何でもないと言わんばかりに片手を振った。
片や金色の三つ編み、片や目を覆いそうな橙色の長い前髪と濃紫のマフラーという、トレードマークとしては濃いモノで覆われている二人は、当然ながら騎士団の中では目立つ存在ではあった。
「……はぁ。もういいです、はい、詰め所戻りますよ。明日はセニア様がいないんですから、久しぶりに団長の指揮なんです。まだ作戦立案も済んでいないでしょう」
「立案なら終わらせたではないか。第一から第三連隊がびゅーんと走って、第四連隊が右翼からずばばーっとガード、第五、第六は予備隊として場内に待機。後は亜人どもの出方を見つつ、第一連隊を後方からずがーっとやれば、ほれ、もう充分だ」
「すみません、私ちょっとアルナベルツの言葉はわからないのですが」
「うん? 君は何を言っとるのかね?」
「いいから戻りますよ」
「……うむ?」
自身の指揮を直感的と自負する人間相手に、立案能力など期待してはいけない。ルーウェンスは常にそう自らに言い聞かせてはいるのだが、たまにはと期待して何が悪いというのか。期待する自分が悪いのはわかっている。わかってはいるのだが、言葉の端に棘が含まれるのはどうか許してほしいと思う。
「……国境の……川沿いで……」
「ゲフェン……の……? あそこは……ヘイム……」
廊下を折れ、もうすぐ第五師団の団長詰め所が近づいてきたときだった。小さな話し声のようなものが聞こえてくる。何だとバードナーと顔を見合わせたルーウェンスは、伝令か何かが詰め所前まで来ているのかと思って先に廊下を折れる。
廊下の突き当たりにある、第五師団団長詰め所の扉の前には、思わぬ二人が立っていた。
「セイレン団長に、セニア様ではないですか。どうしてここへ?」
「あぁ、ルーウェンス殿。明日のことで、バードナー隊長に引継ぎの件で」
敬礼と共に挨拶をしたルーウェンスに、セニアはセイレンとの話を切り上げてルーウェンスのほうを振り向いた。自分の名前が呼ばれたのが聞こえたのか、バードナーがルーウェンスの後ろからひょこひょこと三つ編みを揺らして現れる。
「わざわざ団長自らこんなとこへお出ましで? 言えば我輩のほうから行くというのに」
「はは、そう言うなバードナー。こういうのも仕事の一つだ。部下に仕事を任せようと思うのは、君も同じだろう?」
「我輩は仕事熱心ではないからな。相変わらずであるな、セイレンは」
「私から仕事を取ったら何も残らんよ。……と、私が話していては駄目だな。セニア」
「はい」
セイレンはセニアに場を譲り、壁に背を預ける。では、と前置きをして説明を始めたセニアに対し、バードナーも最初の内はふんふんと相槌を打っていたものの、会話が一分を過ぎ二分を過ぎたあたりから、段々と緑の瞳から知性の色が抜けはじめてくる。しかし、セニアはそれに気づかず、事務的なことから今日までの戦況の状況などを話し続けていた。
その光景を見て、セイレンは苦笑し、ルーウェンスは深々とため息をつく。横から失礼します、と声をかけて、ルーウェンスは完全に鎧の展覧物と化したバードナーを後ろに蹴やり、まだ幼いこの戦の総指揮官の前に立った。この戦場以外ではただのぐうたらの特性ぐらい、半年も一緒に過ごしてきたんだからいい加減理解してほしいと思うのは、きっと、彼の元でもう五年以上も戦場を駆けてきたからなんだろうなぁと、気苦労に絶えない証ともいえる年季のはいったため息を、付くのであった。
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Scene30 - 1
http://yikuya.exblog.jp/13607207/
2011-05-19T01:08:00+09:00
2011-05-22T04:23:34+09:00
2011-05-19T01:08:05+09:00
Akira_Ikuya
二次創作
そんなわけで、AL第二話でござい。ALは現代、過去、という順繰りの話で進む上に、おそらく過去のほうは複数話で一話という形式で進んでいきます。
というわけで、第二話、「その右手に掴むもの」第一パート、「その右手には騎士剣を」
//
片膝をつき、頭を垂れる。さらりと流れた菫色の髪の傍を、白銀の刃が柔らかく動く。彼女の髪を撫でれるほど近くに振り下ろされるその刃は、二度、三度、流麗なきらめきを残して眼前に立つロードナイトの足元へと切っ先を納めた。自らの傍に振り下ろされていたと言うのに、彼女は双眸を閉じて静かにその剣先を受け入れていた。
その白銀の刃は、とても人を殺めることなど出来そうにないほど様々な宝石、装飾に彩られていて、見た目は麗しいが酷く鈍重に見えた。騎士剣を振るうロードナイトは、傍目には顔を引き締めてこの儀に向かっているはずではあるものの、その刃の扱いに苦労しているようだった。自分の愛剣を振るうときのような俊敏な音が聞こえない。尤も、今こうして身動き一つしない彼女に怪我でもさせたら大変だと、心配性な性格に上乗せして臆病になっているのかもしれないけれど。
下段の構えのまま止まっていた儀礼用の騎士剣を、ロードナイトは胸元の高さまで引き上げ、剣の腹を彼女に見せ付けるようにして切っ先を天に向けた。両手で長い柄を握り締め、そのまま儀が始まる前まで立っていた場所へと後退する。自分の場へ戻ったとき、今まで引き締めていた口元がようやっと緩み、ロードナイトは騎士剣を腰元の鞘へと納めた。キィン、と静謐なこの場に響く鋼の音に、ほんの小さな彼の安堵のため息が混じる。
剣が納まる音を聞き届け、彼女は双眸を開けた。それでも、決して頭は上げない。眼前にはもう先のロードナイトはいない。今、自分の目の前にいるのは。
「顔を上げなさい」
「はっ」
静かな声だった。
彼女は言われたとおりに、垂れていた頭を上げる。彼女の視線の先では、派手な装飾が成された玉座に座る壮年の男が、こちらを見据えていた。頭には美麗な装飾で彩られた金の王冠が乗り、口元には豊かな髭が整われ。精悍な顔つきに、玉座さえも小さく見えてしまうほど大きな体躯。
広大なルーンミッドガッツ王国を統べる王の名を、ルシル=トリスタンと言った。
彼女の菫色の瞳と、王の菫色の瞳が交わる。
王は立ち上がり、一歩彼女へと歩みを進めた。
「今この場にて、昇進の儀は執り行われた」
その声を受けて、王の傍に控えていた従者が金で彩られた台座を抱えて持ってきた。その台座の上には、空よりも澄んだ蒼の色でまとめられた鞘に納められた騎士剣が一振り、乗っていた。従者は王の足元にその台座を置き、跪く。王が頷くと、従者は頭を下げて再び脇へと戻る。
玉座の間に集められた十六人の文官、武官それぞれが、彼女と王を見やる。その全員に、そして、目の前の彼女へと、王は、三度口を開いた。
「よって。今この時を以ち。セニア=トリスタンを、ルーンミッドガッツ王国騎士団第一師団副師団長より、ルーンミッドガッツ王国騎士団副団長へと、任命する」
王の声を受け、拍手も、歓声も沸きあがらなかった。彼女は、先と同じように小さく返答の声を発し、十六人の幹部は誰一人として動かない。
その中で、先の台座を持ってきた従者が再び王の元へ歩み寄り、台座を抱えて彼女の傍へと移動してきた。今度は跪くことすらなく、従者は彼女の足元に台座を置いてすぐさま退散する。彼女は台座に乗られた蒼色の騎士剣を見つめ、恭しくその騎士剣を手に取った。
「このセニア=トリスタン。我が身をこの剣に捧げ、我が命を盾として国に捧げ。国のため、民のため、戦うことを誓います」
深とよく通る声による宣誓が成され、彼女は立ち上がった。シャンと鈴を鳴らしたような清廉な音が響き、蒼色の鞘から刃を引き抜く。その騎士剣を、先のロードナイトがやったように胸元まで持ち上げ、切っ先を天に向けて刃を王へと向けた。
「これからもよく励みなさい」
「騎士団の名に、王族の名に恥じぬよう、全力を尽くします」
父から娘へかける言葉としては優しくて、娘から父へと向けるにはあまりにも悲しい言葉。それでも、王はそれに満足したかのように口元にだけ笑みを浮かべて、彼女に背を向けた。そのまま玉座へと座りなおし、そして、次は彼女が一礼の後に、王に背を向けた。騎士剣を鞘へと納め、腰元の鞘袋へと直す。そのまま、左右八名ずつが街路樹のように立っている中央のレッドカーペットを通って玉座の間を後にする。
その最中に、横目でついと視線を動かすと、先ほどのロードナイトがこちらを見つめていて、
「……」
彼女はふいと視線を外した。この息の詰まりそうなほどの静寂に満ちた空間の中、一人だけ微笑みかけてくれたロードナイトが気恥ずかしくて。
彼女がその場を離れるまで、結局、拍手も歓声も、ないままだった。
「第三位王位継承者、セニア=トリスタン。御年十八。王家慣例により、八歳で騎士団見習いとして騎士団に入団。十五歳で騎士団の花形である第一師団副師団長に就任。そして、僅か三年で異例の騎士団副団長……いやー、凄いね。ほんと同い年?」
「……ん、な」
自室に戻ってきたセニアは、自分のベッドに横になりながら素足でぱたぱたとシーツを蹴飛ばしている顔馴染みの少女を見つけて、物凄い脱力感を覚えてその場に崩れ落ちた。少女は喉に餅でも詰まったかのようなセニアの声を聞いて、目尻を下げてけらけらと笑う。
茶のブーツはベッドの下に脱ぎ散らかされ、当の本人はそのまま寝巻きにできそうな薄着一枚でころんとベッドに転がっている。そんな無防備とも言える格好でくつろいでいるこの少女が、プロンテラ城の厳戒な警備を潜り抜けて王族の部屋にまで侵入しているというのだから、世の中奇妙なものである。もちろん、この部屋の主であるセニアも、憲兵も、誰一人としてこの少女の立ち入りを許していない。
シーフ、という職についてもうそれなりに長いのだろうこの少女は、侵入していたのをセニアに見つけられて以来、こうして時折唐突に現れていた。
「いつもは泰然としてるセニアのそんな様を見れるのはわたしぐらいだろね。いやー、役得役得」
「私のベッドに寝転び、あまつさえ私の名を呼び捨てにしてくるのも貴女ぐらいだ」
重ねて言うが、侵入は元より、ベッドに寝転がるのも呼び捨てするのも、誰一人として許していない。
セニアは盛大なため息をついて立ち上がった。
そのまま、もう少女のことは気にしないようにして部屋の隅に追いやられている机の前へと向かった。腰に携えていた鞘袋から騎士剣を取り出して、がらんとした机の上に横たえる。そのまま、装飾ばかりが優先されたせいで着心地も何もあったものではない儀礼用の鎧を脱ごうと金具へと手を伸ばす。銀篭手、肩当をはずし、マントを椅子へとかけた所で、彼女はようやく一息ついて最後の胸当ての金具を外した。
「片付けないの、それ?」
「どうせ明日には騎士団の宿舎に戻る。このような鎧持ち帰っても役に立たん」
そっか、いらないんだ。少女はそう呟くと、ポニーテールを揺らしながら嬉しそうに言葉を続けた。
「じゃあ、それわたしの今夜の獲物にしちゃおうかな」
「……」
「そんな怖い目で睨まないの。嘘々。そんな国に喧嘩売るような真似できないって」
「既に王族には喧嘩を売っているようにも感じるがな……それに、堂々と城の、しかも第三子の部屋に上がりこんでいるシーフが何を言うか」
「嘘つきは泥棒の始まり、って言うじゃない。だからシーフは嘘ついてもいいんだよ」
銀光する鎧を舌なめずりしながら見つめている少女に、セニアはなんと返せばいいのやらと口の端をひん曲げた。この少女と会話をするようになってそれなりの日数が経つが、一度も口で勝てたことはなかった。元来、それほど口達者というわけでもないのだが、それなりの会話なら苦もなく行えたというのに。それこそ、上辺だけの適当な会話なら三歳のころから教え込まれた。
上辺だけの会話では、どう頑張ってもこの少女には敵わない。しかし、自分には上辺以外で言葉を語る術を持ち合わせてはいなかった。
「本当。変な人だ。貴女は」
「シーフの適正試験では抜群の成績だったよ?」
「騎士団には入団試験があるが、シーフにもそういうものがあるのか。意外と厳正なんだな」
「もちろん嘘だけど」
「……そうか」
下鎧のフレアスカートの裾をつかんで、ちらりと自分のベッドで寝転んでいる少女を見やる。下鎧といっても、今日の儀に使われるような代物だ。皺がつかない内にさっさと脱いで保管して置きたかったが、いくら同性とはいえ、最後の一着を脱ぐ踏ん切りはつかなかった。
椅子を引いてスカートの裾を折りたたんで座る。この少女相手に贅沢を言っても仕方ないのは、今までの経験で知っている。精神的に疲れきっているため眠りに就きたかったが、そんなことを言えば最後、おそらく夜半過ぎまでこの少女は居座り続けるだろう。
「それで。今日はどうしたのだ? 儀礼の日だったから、警備はいつもより強固だったはずだが」
「うん? どうしたのって、何が?」
「『仕事』で来るのなら、私がいない日のほうが事を運びやすいだろう。それに、日が日だ。何か狙いがあると考えて然るべきだと思うが」
少女のほうを見やると、対する少女は、両肘を立てて掌に載せていた顎をつんと突っ張り、小さく笑った。
「君の顔を見に来た」
「そうか。貴女が男性でなおかつ秀麗な顔立ちで義のために人のために戦う騎士だったならば少しは頬を染めて上げれたかもしれないがな」
「言ってる言葉と頬の色が違うよん?」
「……疲れているだけだ」
不意打ちで放れたら言葉に思わず赤面してしまったセニアは、少女の言葉から逃げるようにして自分から視線を逸らした。それを見ていたシーフの黒曜の瞳が細められる。
「ほんとに可愛いね。わたしが男だったら放っておかないのに」
「やめてくれ。ただでさえ騎士団では女性兵から色々言われているんだ」
「へぇ……見てみたいな、今度」
「絶対に来ないでくれ」
辟易しつつも、セニアは笑った。少女も、セニアの顔を見て笑顔をほころばせる。
かけられる言葉も、返す言葉も、一切の衒いもなく、ただお互いの感情だけが乗っている。少女の天真爛漫な言葉の数々に比べれば、少女を相手にして初めて知った会話の仕方など、比べるのも可笑しいぐらいに拙いだろう。それでも、少女はセニアに言葉を求める。セニアに笑顔を求める。
その会話に意味なんてなく、たいした道義も求めず、それでも、セニアはその会話が心地よいとは、思う。そのような会話相手を望んでも与えられず、幼きころから王族としての全てを教え込まれ、そして、剣の道まで修めさせられた姫という立場に、その少女のような存在は、ただただ、眩しくて。
『君の顔を見に来た』。
冗談としても、その言葉がありがたい。ただの一つも歓声や祝いの言葉が上がらない昇任の儀なんかよりもずっと嬉しくて、それが故に、きっとこの少女を警備の者に突き出せないのだと、自らの甘さを感じるのであった。
「もし本当に来たいのなら、入団試験を受けて騎士団入りするのだな。腕力がいかほどかは知らないが、ここで顔を合わす回数を考えても試験自体はこなせるだろうに」
椅子の背もたれに肘をかけてそうやって笑うセニアに、少女は嫌そうに眉根を寄せて呻いた。
「えー。だって騎士団って堅苦しそうじゃない」
「またにべもないことを……」
「それに、ほら。えーと、名前なんだっけ。あの団長さん。いつもしかめっ面してるし。怖い怖い。無理無理」
「……セイレン様が?」
少女の口から毀れた人物の意外な印象に、セニアは小首をかしげて少女を見る。
それを受けて、少女はきょとんとして答えた。
「え。何、そこ首かしげるとこ? ほら、いつも陣頭指揮執るとき、こう、眉間のすっごい皺寄せてて。いつも剣の柄を両手で押さえ込んで地面に騎士剣突き立ててるじゃない」
「……そ、そう、か?」
プロンテラ騎士団長、セイレン=テルフォード。鋼色の硬質な髪に、ルビーのように燃える赤い色の瞳。三十路を超えたぐらいだというのに栄えある騎士団長に任命され、全に厳しく、己にも厳しく、規律を重んじ、誰よりも国のために動こうとする。まさに全ての騎士の象徴とも言える存在でもあり、また、憧れでもあった。
と、言うのが、この国に住んでいる人間ならばある程度のことは知っている周知情報ではあるのだが。
「……」
昇任の儀のとき、自らの前で剣舞を行い、剣洗礼を行ってくれたその人物に思いを馳せる。確かに、いつも眉間に皺を寄せていて、そんなに考えすぎてはいつか胃に穴が空きますよは何度か忠告したりもしたけれど。誰に対しても厳しいのは、誰も危ない目に合わないように律しているだけで、己に厳しいのは、自分の都合よりも皆のことを考えているだけで。規律を重んじるのは、自分が守らなければ示しがつかないと過剰に反応しているだけで、誰よりも国のために動こうとするのは、彼自身の心の現われであって。
国に流れている噂ほど冷酷でないし、怒り狂ったりもしない。ただ一人の男の人で、少女とあわせてたった二人の、自分に笑いかけてくれる大切な人なだけなのに。
でも、それはそれで、少し独占感もある。国の誰も知らなくて、自分だけが知っている優越感。
「んー、なぁになぁに? なぁに笑ってるのー?」
「な、何がっ!」
うっかり顔に出ていたのだろうか。
物思いに更けている間に、気づけば少女の顔が眼前に迫っていた。はっとして口元を触る。人差し指に感じる、自らの頬の緩み。
「なーに考えたかおねーさんに言ってみなさーい? ほらほらー」
「ちょっ、ちょっと! やめ、やめなさい!」
わいわいきゃあきゃあ言いながら、少女二人は笑って夜半を過ごす。
明日は、騎士団副団長セニア=トリスタンの、初出勤の日であった。
セニア=トリスタンが騎士団副団長に就任したという話は、翌日には、正式な告知があった騎士団内だけでなく、一般市民にまで伝播していた。騎士団の花形である第一師団副師団長に十五歳で就任した際にも、王族の贔屓だという声は少なからず上がっていたが、今回の出世はあまりにも衝撃的過ぎたのだろう。彼女と王族、そして騎士団を疑う声は、この日を境にあっという間に民衆に広まっていった。
そのこと自体、当然セニア本人は予想がついていた。嫉妬の目も、謂れのない中傷も、表立って晒されたことはないが、影からの言葉にはもう幼い頃から慣れきっていた。
だがそれでも、今回の重圧はその比ではなかった。騎士団に入団することも、また、隊長になることも、そう容易いことではない。誰もがなれるわけでもない。それなのに、まだ二十歳にも満たない自分が、騎士団の副団長だ。これが贔屓でないと、誰が言えよう。
その疑惑の声を止めるには、自らが副団長の器であるということを実力で見せ付けて、妬みの声を叩き潰すしかない。今までだってそうやってきた。そのために剣の腕を磨き、騎士団に貢献し続けた。今回も、そうすればいい。
就任の挨拶を終えたセニアは、司令部の詰め所で一人、壁に背を預けてぼんやりと天井を眺めていた。どれだけ冷たい視線に晒されても、自らの実力を見せ付けて認めさせるしかない。その覚悟は、していた。それでも、数百人を越す騎士団の兵の前で受けたその言葉のない刃は、ふと気を緩めば泣きそうになるぐらい、辛かった。
ヘルムを目深に被る。後頭部の金具が自らの髪の毛を噛んで痛みが走ったが、それでも構わずにヘルムを押し込んだ。
こんこん、と扉をノックする音が聞こえた。今は各騎士はそれぞれの詰め所に戻っているはずだ。伝令か何かだろうかと思って、セニアは居留守を使おうと扉から視線を外した。先程の今で兵と顔を合わす気力は、さすがの彼女も持ち合わせていなかった。
それでも、ドアノブを捻る音がして、蝶番が開く。セニアは胸に空気が差し込まれる音が聞こえて、咄嗟に声を上げていた。
「何をしているか! ここは団長格以外立ち入り禁止だぞ!」
「そうだな。そして私は団長だが」
目深に被ったヘルムを上げる。頬を掻き、困ったように苦笑を浮かべ、赤い瞳を細めて入り口から動けなくなっているロードナイトの姿が目に映り、セニアはあわあわと慌てて息を吸い込んだ。
「す、すみません! セイレン様と気づかず、その、申し訳ありません!」
「何だ、緊張でもしてるのか、セニア様」
物凄い勢いで頭を下げるセニアに、今度こそ騎士団長セイレン=テルフォードは苦笑ではなくて声を上げて笑った。そのままセニアの隣まできて、下げられた頭をぽんぽんと叩く。
「挨拶、大変だったな。ちゃんとやれてたよ」
「……そう、でしょうか」
「ああ、そうさ。私のときはもっと酷かったからな。噛まないか、粗相をしないか、三日前から眠れなかったんだ」
「その光景が目に浮かびます。その頃から胃痛持ちだったんですか?」
セイレンが言う軽口に、セニアはようやく笑みをこぼした。
元来、セイレンはこのような軽口は滅多に口にしない。心配性で臆病で不器用な彼は、どうしようもないほどにガラス張りの気遣いしかできなかった。しかし、その気遣いがセニアには嬉しく思う。他の誰もがするような上辺だけの言葉ではなく、単純に自身のことを考えてくれているのだと、彼が不器用だからこそよくわかるのだから。
「胃痛持ちとは言ってくれるな。まだ持病にはなっていないんだからな」
「私はいつセイレン様がそうなってもいいように、ちゃんと薬師に言付けていますから」
「いい部下をもって幸せだよ。涙が出そうだ」
苦笑して、セイレンは手身近の椅子に座った。机の上に乱雑に散らばっていた書類を拾い上げて、横に転がり落ちていた判子を手繰り寄せる。
ざっと内容に目を通して判を押しながら、セイレンは未だに壁際で突っ立っているセニアを手招きして、テーブルを挟んだ対面に座らせた。
「あんなに小さかったセニア様が、もう私の部下か。時が経つのは早いものだ」
「そうです、もう私はあの頃の私じゃないんです。今は貴方の部下なんです。だから、いつまでも様付けしないでください」
「……そうは言ってもな。確かに君は私の部下だが、その前に姫様だろう」
判を押す手を止めて、苦笑してセニアへと視線を上げる。
セニアはその言葉に少し頬を膨らませて、そっぽを向いた。
「もう貴方は、私の指南役ではないんです。もう、客人ではないんですから」
「そうか……そうだな」
セイレン=テルフォード。彼個人の名は確かに民衆へ広まっているが、それ以上に、彼の出自であるテルフォードの名はプロンテラ王国では広く認知されていた。数代に渡って騎士団幹部に名を連ね、騎士団団長を歴代務めてきた名家である。また、家名だけではなく、質実剛健を基本とした家風は色褪せることなく今も引き継がれ、彼自身を以ってして騎士団一の腕前として認められていた。
家柄で騎士団団長の座を奪い取ったという妬みの声は、就任当時一切上がらなかった。それだけの腕が、技量が、器が。そして、テルフォードの名が、彼を騎士団団長以外の席を用意しなかった。
「わかったよ。私が退役するまで……もしくは、君が私の変わりになるまで、君は私の部下だ。それに、そうだな」
十年前。騎士団に入り、周りの妬みの視線に負けずと剣を振り、剣の腕を認められて。そして、まだ十も数えない年齢だった彼女の剣の指南役にと任命され。
その頃からの付き合いになる目の前のお姫様に向けて、セイレンは双眸を向けて、しっかりと頷いた。
「私が様付けしていたは、周りの者に示しがつかないからな……改めて、これからもよろしくな、セニア」
「……はい! よろしくお願いします!」
飛び跳ねるような元気のいい返事に、セイレンは苦笑して再び書類の方を向いた。机の上に散乱していた書類はまとめてみるとそれなりの量があったらしく、ぺたぺたと判を押す音だけがそう広くもない詰め所に聞こえる。
幼い頃からセイレンのことは知っていたが、騎士団長として働く姿は初めて見た。自分も第一師団で副師団長として働いていた頃は部下への指示や書類仕事が多かったが、どうやら、これからもそう変わりそうにはないようだ。むしろ、それぞれの部隊である程度の指示系統が確立している時点で、ここへ持ち込まれる仕事は騎士団全体に関する仕事なわけだから、そういう仕事がメインになるのは仕方ないのかもしれない。
「私は何をすればいいですか?」
認可がいる仕事はできないが、それでも自分の権限が通じる範囲の仕事はできる。そう思ってセニアは声をかけたが、セイレンは少し眉根を寄せて唸った。
「んー……今日はセニアの就任挨拶があったから、仕事は大体片付けていたんだよ。就任早々動かないといけないほど、今忙しい時期ではないしね。部隊の再編も終わったばかりだから」
「そう、ですか……」
「何だ。そんなに働きたかったのかい」
セイレンに問われ、セニアは口の端を噛み締める。
「私は早く、認められなければいけませんから。まだ実力が伴っていないのは、私自身もわかっていますが……だから」
「……そうか、そうだな。君も、当然その壁にぶつかるよな」
騎士団に入団した頃を思い出したのか、セイレンの声もまた、愁いを帯びていた。
目の前のセニアの悔しそうな顔を視界に収め、書類へと目線を下ろす。その書類に自らのサインを書き入れ、サインを押した後、視線を落としてしまったセニアの前に書類をすべり込ませた。
顔を上げてこちらを見るセニアに、セイレンは持っていた羽ペンを差し出した。
「そんな君にうってつけの仕事がある。本当は第五師団だけに任せようと思ったんだが、どうだい。一緒に行くか?」
セイレンに言われて、セニアは再び書類へと目を通す。
誰が書いたのかはわからないが、荒々しくて少し読みづらい字を必死に追う。柳眉を寄せていた彼女の端整の顔が顔が段々と驚きに染まっていくのを眺めながら、セイレンは彼女の返事を待たずに言葉を続けた。
「私の仕事としては最近は落ち着いているけどね。騎士団としては、そうも行かないんだ。君も第一師団にいたのなら聞いているだろう」
「ええ。トラス師団長がよく伝令に怒鳴っているのを聞いていましたから」
「トラス君か。確かにまぁ、彼はそういう気質だね」
セイレンが差し出していた羽ペンを、セニアは受け取った。
「ゲフェン郊外の第三防衛拠点からの応援要請があってな。ゲフェンは我が国の魔法学の最重要都市だ。だからこそ、防衛戦に長けた第五部隊をぶつけることが先週の会議で決定した」
セイレンの声を聞きながら、端整な文字で書かれている彼のサインの横に、自分の名前を連ねる。
そして、今日受け取ったばかりの判を、目の前のインクをつけて、書類へと押し付けた。
「最近あの辺は魔物の数が急に膨れ上がってきたから、兵も疲弊していてね……名目は、防衛部隊への激励、そして陣頭指揮を執ることによって兵の士気を高めること」
「そして、さしづめ、私のお披露目会、といったところでしょうか」
「見世物にする気はないんだけど、な。それでも、初の指揮としてはいい機会だと思う。人間同士の争いより、余程やり易いはずだ」
自虐的に言って書類を返したセニアに、セイレンはさらっと重大な単語を混ぜて書類を受け取った。
「……え、まさか私が指揮を執るんですか!?」
「見世物にする気はないが、飾り物にする気もないぞ。大丈夫、私も随行して助力するから」
肘を立てて掌を組み合わせてこちらを見やるセイレンに、セニアは小さく呻いて冷や汗をかいた。
昔から剣の修練となると一切の手加減がなかったセイレンだが、どうやらそれは仕事の面に関してもらしい。普段は優しく話しかけてくれたが、なかなかどうして、彼の帝王学はスパルタのようだった。
「ゲフェン郊外の防衛戦。何、相手は隊列も陣もないただの魔物だ。セニアなら捌けると、私は信じているよ」
それでも、笑顔でそう言われるとぐうの音も出ない。
自らの実力を見せ付けるいい機会で、そしてそれは自分も望んだ。早く皆に認められたい。早く、目の前にいる彼に、認められたい。
それに、自分がもし何か失敗しても、後ろに彼がいる。一人で赴くわけではない。独りで、あの冷たい刃の前に晒されるわけではないのだ。
「……不肖セニア=トリスタン、全力を以ってその任、お受けいたします」
「ん。君の戦果を、期待しているよ」
ゲフェン郊外第三拠点防衛戦。
こうして、セニアの騎士団副団長としての初仕事が、決定した。
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Scene29
http://yikuya.exblog.jp/13483060/
2011-04-30T02:12:00+09:00
2011-04-30T02:21:35+09:00
2011-04-30T02:12:55+09:00
Akira_Ikuya
二次創作
そんなこんなで、AL。あんまり生体と関係ない話なんですが、それでも読んでもらえると嬉しいです。
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季節は冬の真っ只中にいた。落ち葉は散り終え、家先を掃かなくてもよくなってきた代わりに、雪を孕んでいそうな分厚いどす黒い雲が眼下を流れていく。雲の上にあるが故に、その寒さは筆舌の度し難く、コートを着込んで首にマフラーまで巻いているというのに、今しがた彼女を舐めていった風に首をすくめて箒を握り締めた。
シュバルツバルド共和国、首都、空中浮遊都市ジュノー。その一画に、未だ新築と言っていいほど綺麗な家が一軒在る。周りの家々が歴史を重んじたばかりに、何処かくすんで草臥れた色をしている中で、淡いベージュを基調とした柔らかい印象を与えるその家には、日々多くの人が足を向ける。
彼女はそこの家の、使用人。いや、使用人、と言えば彼女自身どころか、ここに住まう家主、そして、近隣の住人全員が気を悪くするかもしれない。彼女は決して、使われているわけじゃないのだ。彼女は、この家の主人のために、別に強制力とも何もなくても毎日この家を訪ねては、この主人の代わりに掃除や洗濯、その他細々とした家の仕事を受け持っていた。
と、いうより。目を離していると、この主人は無理をして全て自分の手でやろうとしてしまうのだ。
以前、大火事によって全焼し、そこにまた新たな家を建てた、柔らかい空気の流れる一軒屋。
そこの家に住む、一人の女性の名を、フィーリル=アヒレスと言った。
もう掃除は必要はないか。家に帰って、フィーリルのために温かいスープでも作ろう。壮年の域に達するぐらいの彼女は、そう思って箒を仕舞いに裏手へ回ろうとしてふと足を止めた。そのまま、ゆっくりと背後を振り返る。
町の通りの、更に向こう。こちらの家に誰かが近づいてきていた。
二人の姿はローブに覆われてよく見えない。ペコペコに跨ったまま特に急ぐ気配もなく、そして、迷うことなく一直線にこちらへと向かってきている。来客、だろうか。
彼女は、目を凝らしたまま首をかしげた。今日は来客の予定もなかった。予定もない来客といえば、せいぜい、以前フィーリルに剣術を習っていた子どもたちがフィーリルの様子を見に遊びにきたぐらいか、近隣の住民がお鍋片手におすそ分けに来るぐらいで、わざわざペコペコに乗ってエルメスプレートを登ってくるようなことはありえない。目を凝らして様子を伺っていた彼女は、思わず箒を取り落としそうになった。
二人が騎乗している、そのペコペコは。
「……ルーンミッドガッツ王国?」
ペコペコの前掛けにつけられた、ルーンミッドガッツ王国の正国旗。その正国旗の下に交差された、二本の剣。
隣国にあたるこのシュバルツバルド共和国にまでその名を知らしめる、ルーンミッドガッツ王国プロンテラ騎士団の団章だった。しかも、普段の騎士が前掛けに使う略式団章ではなく、栄えある獅子の刺繍が施されている。数十年ほど前に見ただけだから細部までよく覚えていないが、それでも、僅かに引っかかるほどのインパクトは記憶に刻まれている。
確か、あの団章は、国王から直々に授け受ける、正式団章。
「騎乗から失礼。ご婦人、少しよろしいか」
「何でしょう」
相手も、じっと自分たちを見ていると気づいたのだろう。真っ直ぐにこちらにペコペコを向かわせ、綺麗に二列横隊の体勢で声をかけてきた。
遠目から見ていたから気づかなかったが、このローブの二人組は、騎士団の―――それも正式団章を授かっている癖にはどうにも小柄だった。そして今聞こえた、硬質だか少し甲高いその声は、どうしてもまだ若い女性にしか聞こえない。
ペコペコの手綱を握る彼女の銀篭手は、そこらの騎士がおいそれと持てるような安物ではなく。素人目に見ても、細部にちりばめられた装飾や宝石はかなり値が張るものだと見受けられる。目線の先にあった手から、顔を上げて相手の顔を覗き見る。
「ルーンミッドガッツ王国プロンテラ騎士団第七部隊師団、徒歩部隊元副隊長フィーリル=アヒレス殿の家はここであっているだろうか」
「……あの、貴女は?」
彼女の声に、緊張が混じる。今このローブの女性は、ジュノーに住んでいる人は誰も知らないはずのフィーリルの以前の素性をこれ以上ないほど正確に言い当てた。フィーリルのプロンテラ騎士団脱退前については、フィーリルが生まれてからずっと交友のある彼女でさえも聞いたことがない。フィーリルがプロンテラから戻ってきた際に数度聞いたことがあるものの、苦笑して紛らわされてしまった。そんな、自分に打ち明けられないほどの脱退前の身分。
そして、いきなり訪れた、正団章をつけた二人組。フィーリルの経歴を知る者。
彼女の声が固くなるのも、仕方ない。妙な緊張を感じ取ったのか、声をかけたローブの女は首をかしげた。
「ああ、失礼。警戒されておられるのか」
「ひ、姫様ー。だからあたし、さっきから言ってたじゃないですか。そんな言葉使いだったら怖がってしまうってー」
ローブの女の横に控えていた人物の声も、また年若い女のものだった。ぱちくりと皺が寄った彼女の目が瞬く。聞こえてくる声はどちらも二十歳前の瑞々しい声。そんな年頃の女性が、正団章をつけたペコペコに騎乗し、この家を訪れている。
そして、たった今、何とも唐突に聞こえた単語。姫様。言われて眼前のペコペコに乗った女性を見やる。凛と伸ばした背筋、厳かな物言い、ローブの奥から覗かせる菫色の芯の篭った瞳。騎士団所属という身分をさておいても、その所作といい、所持品といい。高貴な出自とは、思っていたものの。
一体何事だ。あの子に、今度は一体何を運んできた。
箒を握り締めたままの彼女の言葉を待たずして、最初に声を発したローブの女は、諌めるような言葉を告げた人の声を綺麗に無視して、頭を覆っていたローブを剥いだ。
長い長い青髪が、はらりと宙を舞った。その美しさに使用人は一瞬見惚れ、そして、
「ルーンミッドガッツ王国、第三位王位継承者。並びにルーンミッドガッツ王国プロンテラ騎士団副騎士団長、セニア=トリスタン。フィーリル=アヒレス殿に頼みがあって、馳せ参りました」
握っていた箒が、ころんと転がる。
三年前から止まっていたこの家の時間が、今、ゆっくりと再び動き始める。
通されたフィーリルの自室で、二人の来客の前に珈琲が配られる。湯気が立つカップを両手で抱え込みながら、セニアはぽつりと声を漏らした。
「……なんと、目が」
「はい、もう三年も前のことになります」
ぱたん、と扉が閉められる。気を利かせて、部屋を辞したのだ。
長い銀髪が特徴的だった彼女の髪は肩口で切りそろえられ、明るい光をたたえていた双眸は今や無機質な包帯に包まれて二度と見ることは出来ない。フィーリル=アヒレスが騎士団を脱退したのは五年前。当時はまだ王族とはいえ、騎士団の中で専任の指南役に剣の稽古を見てもらっていたセニアにとっては、彼女の瞳が光を失う以前の顔を見たことがない。
自身、他人が見れば目が覚めるほどの美貌を持っているにも関わらず、彼女は包帯に覆われたフィーリルの顔を見て思う。
きっと、綺麗な人だったのだろうな、と。
「すみません、セニア様直々に、こんな外れ者のところに来てくださったというのに……」
「いえいえ、フィーリルさんといえば、未だにプロンテラ騎士団の中に名前が通っちゃってる人じゃないですか。ほら、七年前のゲフェン郊外を巡る防衛線」
「もう、昔のことですから――――そちらの声は、ひょっとして」
「あ、はい。憶えていてくれてたんですか? 嬉しいなぁ」
浮雲。唇を小さく動かして、フィーリルは彼女のほうを向いた。
「……パティリア=フレイアース。伝え聞いたときは驚きましたよ。まだ私が騎士団にいた頃は、第五兵団の中で鍛えられていたのに……歳月というのは、恐ろしいですね」
「えへへ、照れるなぁ。曾々お爺ちゃんからずっと世襲してきましたけど……でも、嬉しいです。フィーリルさんにそんなこと言ってもらえて。当時憧れてたんですよ、あたし。それに」
「パティ、いい加減にしないか。フィーリル殿が困っている」
「と、あ。ごめんなさい、姫様」
数年来の憧れの人物に逢えた興奮もあったのだろう。身を乗り出してフィーリルの手を掴んできらきらと瞳を輝かせるパティリアの頭をこつんとセニアが小突く。ばつが悪そうに、パティリアは髪を揺らして椅子へと座りなおした。
その光景を聞きながら、フィーリルは小さく笑った。姫と、その従者。それなのに、彼女たち二人の間に流れる空気は、そんなことを微塵も感じさせないぐらいに穏やかで、朗らかで。仲のいい親友―――いや、言葉を重ねるならば、それはまるで姉妹のようで。
いつかの、在りし日の自分たちを思い出してしまうぐらい、切なくて。もし叶うならば、その光景を、瞳の中に、記憶の中に刻み込みたかった。
「フィーリル殿?」
「……はい、何でしょう?」
呼ばれた声に、はっと意識が戻る。口元の笑みを引き締め、肩にかけたカーディガンを微かな力で握った。
「――――ああ。そういえば、用件をまだ聞いていませんでした」
「……そうであったな。内容を告げるのを、思わずためらってしまうが」
「お役に、立てそうにもありませんものね」
「フィーリルさんと同じ戦場に立てると思って、あたし、楽しみにしていましたのに……」
「それでも、ここまで来て手ぶらで帰る、というわけにも立場的に行かないものでな――――フィーリル殿、少しお時間、いいか」
「はい、私は構いません」
「パティ、内容を」
「はーい。えっとですね」
マグカップをベッド脇のテーブルに置き、肩にかけてあった鞄から封をしたスクロールを取り出したところで、パティリアは手を止めた。スクロールとフィーリルの顔を見比べて、渡そうとしたそれを自らで封を解いた。赤い文字で題字が飾られ、国王の捺印が押された列記とした公的書類。本来ならこの紙を手渡せば、それは国王の勅命となり一般の人間なら断ることすらできなくなる。
しかし、手渡したところで、彼女はこれが読めない。そして何より、三年前に剣すら握れなくなり、盲目となった彼女を―――どうして、戦場に駆り出す事が出来ようか。
「パティさん、ためらわないでいいですから」
「う。……うー、はい、わかりました。では」
セニアのほうを目配せするも、彼女は目を伏せたままこちらを見てくれない。酷な役目、押し付けるなぁ。パティリアは少しだけ泣きそうになりながら、紙面を読み上げた。
「――――ルーンミッドガッツ王国騎士団第七部隊師団、徒歩部隊元副隊長フィーリル=アヒレス殿。ルーンミッドガッツ王国騎士団緊急規約第五条に基づき、貴女を第一部隊師団へ、徴集いたします」
ぴくんと、肩が震えた。ある程度予想はついていたとはいえ、口の中にたまっていた唾を空気と一緒に、無理やり飲み込んだ。
掴んでいたカーディガンの裾を、フィーリルは強く握る。それでも、カーディガンは僅かに皺が寄っただけで、生地が捻じれることすらしない。
今の自分には、剣を振るうことは愚か、自分の不甲斐なさを憤ることさえできない。そのことが歯痒くて悔しくて、フィーリルは伏せていた顔を上げる。
暗闇の中、眼前の二人を見据える。
俯いてはいけない。彼女の本来の性質である気丈さが、彼女の背筋をぴんと張らせた。
「……強いな、貴女は」
「王族が兵の強さを認めては、いけませんよ」
静かな言葉に、セニアは微笑んで返した。この笑みが届かないとしても、セニアは彼女の強さをただ、褒め称えたかった。
フィーリルとセニアの間に視線を彷徨わせていたパティリアは、一つ嘆息して、赤い紐を結いなおし、紙面をまたスクロールへ戻す。
「詳しい説明をさせてもらいますね。王国特命の、しかも緊急規約が発せられるなんてここ数十年じゃ初めてのことですから、何かわかんないことあったら言っちゃってください」
「……はい」
ルーンミッドガッツ王国プロンテラ騎士団は、国名、そして首都の名を冠すだけあって、ルーンミッドガッズ王国と関わりが深い。故に、騎士団には国防という任務がついて回り、騎士団に配属されたものはまず真っ先に防人となって各地の防衛拠点に配置される。防衛拠点としては、ルーンミッドガッツの魔力の中枢部となっているゲフェン郊外や、シュバルツバルト共和国との国境となるアルデバランなど多岐に渡るが、シュバルツバルト共和国、ルーンミッドガッツ王国、アルナベルツ教国の三ヶ国が比較的友好な関係を築いている今、専ら対モンスター用の防衛拠点となっている。
そして、過去に発生した緊急規約は全て、その防衛拠点における国の存続に関わるほどの大きな戦だけだった。
戦果によってフィーリルが退役するきっかけとなった第六十八度ゲフェン西方防衛戦ですら、緊急規約は発せられなかった。その戦では五百人以上の負傷者を出し、今なお、西のゲフェン郊外は焼け野原となっている。街もいくつか、巻き添えとなった。
あの戦は今でも双眸の奥にイメージとして焼きついている。その戦でも出なかった、緊急規約。遠く離れたこんなはずれ者までかき集めないと行けないほどの戦いが、始まると言うのか。
「まず初めに言っておきますが、此度の任務は、防衛任務ではありません」
フィーリルの思考に釘を刺すように、パティリアは言葉を区切った。
「――――生体工学研究所、という施設を。フィーリルさん。あなたは、知っていますよね?」
「…………」
どうしてその単語がパティリアの口から出てきたのか、フィーリルにはついぞわからなかった。あの戦でさえだされなかった緊急規約、それが発せられたというのに、国防でもなく、出て来た単語が、いつか自分が足を運んだあの実験施設だなんて。
訝しげによったフィーリルの眉根に、パティリアは困ったなという仕草で小さく咳払いをした。
「こほん。調書によると五年前、あなたは行かれたそうですね? 一応あそこは非公開の施設、しかも、他国の法人が所有するものなので何らかの法的処分があるかもしれませんが……今回は事が事なので、あたしたちからは何も言いません。居住区も、ここシュバルツバルト共和国に移されているようなので、何かあればそちらからくるでしょう。ええ、あたしは知りません。……で、いいんですよね?」
「は、はぁ……」
「私たちはそのことについて言及しにきたわけではない。問題は、そこから先でな」
言葉を進めていく内に、自らの口調が弾劾しているようになっていったのに気づいたのだろうか。パティリアの語尾は面白いほど歪んでいって、最後にはセニアへと不時着した。呆気に取られているフィーリルに、セニアは苦笑めいた言葉でパティリアへと続きを促す。
「その生体工学研究所を、第一部隊師団、第三部隊師団、そして第五部隊師団で制圧を行います」
「……ちょ、ちょっと、それ、騎士団の主力部隊じゃないですか!?」
「ぇ、あ、急に動くと、お体に障ります!」
今まで静かに話を聞いていたフィーリルも、出て来た部隊名に粟を食って身を起こした。慌ててパティリアがフィーリルの両肩を抑えて、ベッドの上に座りなおさせる。
「はい、主力も主力。しかも大盤振る舞いで王族が傭兵まで雇用してます。でも、その施設は、さっきも言いましたが他国の法人が所有していて、閉鎖済み。そんなところを制圧するも何も、内部がまったくわからなくて……それで、色々調べたところ、フィーリルさんが以前そこに行ったという情報があがったもので」
「……それで、私のところへ」
「はい。あ、えっと。さっきも言いましたけど、別にこっから軍法会議にかけるとかはありませんからね!」
「ええ。聞きましたよ」
余程先ほどの自分の発言が気になるのか。念を押すパティリアに、くすりと小さく笑みを零す。
「説明ご苦労だった、パティ。そして――――本来なら、拒否権限はないのだが……あなたの様態が、様態だ。フィーリル殿、よければ私のほうから騎士団のほうに断りを入れることもできる。だから、断ってくれてもいい」
腕組みをして話を静かに聴いていたセニアは、フィーリルを真っ直ぐ見据えて是非を問うた。
その声音に嘘偽りの響きは感じられず、純粋にこちらを心配してくれているのが伝わってくる。
王族は兵を称えるものではなく、騎士団副団長が退役した兵を訪ねて口ぞえなど、当然するものではない。それでも、目の前の女性は、今きっぱりと言い切った。
セニア、と名乗った。あの忌み名を背負わされた姫と聞いて、末が気になってはいたけれど。
「栄光に砂をかけ、その場を離れた身ではありますが。その命、謹んで受けさせていただきます」
何ができるわけでもない。
剣を握れるわけでもない。
それでも、目の前にいる何処まで高貴なお姫様のために、今一度、自分の使命を全うしたいと、思った。
「ほ、本当ですか!?」
フィーリルの返事を受けて、セニアよりも先にパティリアが喜びの声をあげた。身を乗り出してフィーリルの両手を掴んで、ぶんぶんと振り回す。なすがままに上下する腕に、懐いてきた妹の面影を感じてフィーリルは目じりを下げる。その光景を、セニアは微笑んで組んでいた腕を解く。
「フィーリル殿には第一部隊、つまり、司令部に入ってもらう。当時のことを覚えていれば見取り図なども書いてほしかったが、贅沢は言わない。ただ、知っていることを私たちに連携してくれると、助かる」
「ふふ、ただ、命を下さればいいのに。いい為政者となられましたね。セニア姫」
セニア、と言えば。
五年前、あの廊下で剣を重ねた少女の名前も、確かその忌み名を背負っていた、ような。
「では、制圧目的を、私のほうから言わせてもらおう」
記憶を辿る。
そう言えば、あの時は特に意識していなかったが、あの少女の顔と、自分の記憶の中にある七年前のセニアの顔は、確か。
「暴徒が立てこもったわけではない。戦争が始まるわけでもない。ただ――――私の名前と、騎士団の誇りを、取り戻しにいく」
まったく、同じだったような、気がした。]]>
【A Little】
http://yikuya.exblog.jp/13483097/
2011-04-29T02:26:00+09:00
2011-06-16T23:51:12+09:00
2011-04-30T02:26:42+09:00
Akira_Ikuya
二次創作
Scene29 - 「過去に呼んだ名前を呟いて。」
Scene30 - 「その右手に掴むもの。」
1. 「その右手には騎士剣を。」
2. 「その左手には指揮棒を。」
3. 「彼女の右手は銀貨を放す。」
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あ、風邪薬きれた。
http://yikuya.exblog.jp/13416177/
2011-04-19T21:45:35+09:00
2011-04-19T21:45:34+09:00
2011-04-19T21:45:34+09:00
Akira_Ikuya
リアル
今まで結構楽しかったプロジェクトから4月頭をもって異動となって、何かもう変なストレス下の元でひーこらやってます。何か4月下旬から忙しくなるらしいよ? 精神的だけじゃなくて肉体的までやばくなったら真面目にやばいんじゃないの?っていう環境で日々勤しんでます。楽になりたい。ピギィ。
そして何か昨日ぐらいから喉が痛くて、今日の夜やっと風邪薬飲んだんですが最後の一粒でした。あれ、明日の分は?
そんなこんなで、今日も元気に迷走してます。明日はどっち。
そしてALの1話は多分近々アップします。2話以降書き溜めれてないので、できればストック確保してから動きたいところ。]]>
雑貨貪欲スロープHERO。
http://yikuya.exblog.jp/13242672/
2011-03-26T02:27:00+09:00
2011-03-28T00:55:10+09:00
2011-03-26T02:27:29+09:00
Akira_Ikuya
遊戯王
まだ荒削り。っていうかこれで廻るかどーかわかんないけど、試験勉強中に浮かんだので走り書き。
うん、やっぱり深夜のテンションに任せちゃいけないね! 魔法多すぎてこれ絶対墓地肥やせないよ!
ってことでお蔵入り。ちょっと形を変えて出直そう。
あ、それと試験受かりました。がんばったよ!]]>
灰色の果実の反逆。
http://yikuya.exblog.jp/13199923/
2011-03-21T20:56:33+09:00
2011-03-21T20:56:31+09:00
2011-03-21T20:56:31+09:00
Akira_Ikuya
リアル
前評判では「あきちんはどうせ由美子にハフハフしてんだろ」ってRd面子から言われてましたが、結局最後の最後まで幸がぶっちぎりでした。幸かわいいよ幸。いや、由美子もデレてからはクーデレの本領発揮だったけど。
そんなわけで、萌えゲーになりきれない萌えげー、泣きゲーになりきれない泣きゲーではありましたが、かといって途中で飽きたりすることなく最後まで終わりました。悪くないゲームでした。二週目はちょっと特定キャラはおなか一杯だからいらないけど。これの(幸せな)後日談が出るとかなら喜んで買わせていただきます。重い話はもうええっちゅーの。
このゲームの煽り文句は一体なんだったんだと思ってたんですが、由美子Trueいってやっと納得。世界を壊す果実とは確かに言いえて妙でした。こういう抽象的な複線はキライじゃねーです。あんまごちゃごちゃいうのも荒れなので、とりあえずグリザイアの果実はこれにて了。4月に神採りアルケミーとReWrite発売するまで、しばらくオフゲーは終わりのようです。
あ。やっぱり千鶴は俺の嫁で!]]>
いつもの僕です。
http://yikuya.exblog.jp/13178299/
2011-03-20T00:36:16+09:00
2011-03-20T00:36:14+09:00
2011-03-20T00:36:14+09:00
Akira_Ikuya
リアル
グリザイアの果実、結局みちるもクリアして最後の由美子ルートいってます。今んとこ全キャラ通してもやっぱり幸が可愛すぎる。千鶴も可愛いけどな! みちるは確かに、個人ルートいったらうざさは多少軽減した。多少は。
何かトワが喜びそうなシーンがあったのでとりあえず張っておきますね。あ、僕はそんなわけで今日も元気です。]]>
オニオンリング。
http://yikuya.exblog.jp/13119420/
2011-03-13T18:19:04+09:00
2011-03-13T18:19:04+09:00
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Akira_Ikuya
リアル
会社に連絡いれて、引継ぎ作業で2時間だけ出社してすぐに福岡に帰って、通夜、葬儀と行い、火葬中の待合室で地震の映像を見ました。
何かもういろんなことが立て続けにあって、被災地でもないのにものっそい憔悴してました。今、大体の手続きが終わって大阪に戻ってきてます。友人諸氏には何とか連絡がついて、今日の昼過ぎ、東北地方に唯一すんでる姫とも連絡が取れたので、何とか交友関係は全員無事のようです。
そんなこんなで数日空けてました。
何だか、全てが終わって、やっと少し、思い出に浸ることが出来そうです。
でも、オニオンリングは多分、まだ苦手のままだと思います。]]>
なぁにこの結果。
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2011-03-07T00:58:44+09:00
2011-03-07T00:58:44+09:00
2011-03-07T00:58:44+09:00
Akira_Ikuya
二次創作
とりあえず、3月のベンダー試験が終わったらAL着手しようと思います。ALより先に、SDを「雨蝉」まで終わらせないといけませんが、はてさてどーなることやら。]]>
ついでにこっちでも。
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2011-03-03T01:13:08+09:00
2011-03-03T01:13:06+09:00
2011-03-03T01:13:06+09:00
Akira_Ikuya
二次創作
内容:書いてる小説の次の章であるALに一話分の余裕があり、ハワードかラウレルどっちかを出そうか悩んでるけどどっちでもいいので、読んでる人に委ねたい
期限:3/4 23:59
方法:どちらか投票
投票先:ここのコメント、メッセ、スカイプ、ツイッター、携帯メール等々、とりあえず俺に連絡くれればおk
ツイッターのほうには3/3っていったけど、ちょっと期限もって3/4まで。
まったく興味ない人にはこの記事の存在自体がすいません☆(ゝω・)v]]>
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