Story5

 某スレに投下して、うっかり地名論議を引き起こすきっかけになってしまった小説。
 いや、俺の勘違い語彙がもりだくさんだった話でもあるんですが。

 小説開始前に拍手お返事。小説関連のしか来てなかったんで小説前に混ぜ込んで起きます
。っていうか、LP乗っけた途端コメント三つもあってお兄ちゃんちょっと驚いたよ!?



21:49 わわっ!ついにLPの続編ですかっ? ……
 実はずーっと温めてた話でもあるんですが、色々吹っ切りたいためにとうとう載せちゃいました。LP時とは違い、書き溜め分がないためあの頃よりロースピードとは思いますがお付き合いくださいませヽ(´ー`)ノ

23:25 Roのスレッドからここを知りました!……
 あれ、俺のサイトの名前かかれてたっけ!?
 何はともあれありがとうございます、しがないごった煮ブログですが、楽しんでいただければ幸いです!ヾ('□'*)ノ

2:23 LP泣けました。……
 泣いていただいてありがとうというべきか、何と言うべきか(ちょーん
 何はともあれ閲覧ありがとうございます。のんびりだらりやっていくつもりですので、お付き合いくだされば幸いですヽ(´ー`)ノ






//

 何羽ともつかない程の多くの鳥が、頭上を大きく旋回していく。舞い散る白羽はさながら雪のようで、王立騎士団が第二師団、歩兵隊長のセイレン=ウィンザーはその羽を追いながらついと空を見上げた。
 あの鳥は、鳩だろうか。遠目にしか見えなかったその鳥の種類を言い当てれるほど野鳥に親しみがないセイレンは、僅かな願いを載せて群青色の空の向こうへその鳥を見送る。鳩は平和の象徴だというのを、いつぞやお転婆な知り合いのプリーストから聞いた覚えがある。何故あの鳥が平和の象徴かは理由がわからなかったが、人が寄ったところで逃げもせず、むしろ餌を寄越せと突付いてくる様は、なるほど確かに、人畜無害すぎて争いなどとは縁遠い存在に見えた。

 鳥の大群を見送り、自分の指揮下にいる兵たちが待つプロンテラ凱旋門へと視線を移す。凱旋門、などと銘打たれれば聞こえはいいかもしれないが、実のところはただ凱旋を終えて兵士たちを迎えるときだけに使われるだけで、いつもは南門と呼ばれていた。平時の凱旋ならば多くの市民たちが自分たちを熱狂的なまでに迎え入れてくれるのだが、あいにく、今はようやく宵が空けようかと言うところで、こんな時間に起きているのはせいぜい野菜商などぐらいだろう。メインストリートであるこの通りも、いつもの喧騒など欠片すら残しておらず、静けさを通り越して薄ら寒くすらあった。

 それに、今は凱旋のときではなく、出陣のときである。この凱旋門も、ただ正規の南門として使われるだけで、門を飾り立てる槍もなければ剣もない。出陣式すら行われなかったこの出陣に、果たして何人が自分たちを送り出してくれるというのだ。

 腰に帯びた騎士剣の柄を、何とはなしに銀篭手に包まれた右手で握り締めた。宵明けの町を踏みしめると、いつもよりも聞こえてくる軍靴の音が更に大きく聞こえてくるような気さえした。しんと聞こえる静寂の中、ブーツで煉瓦を叩いて、ただ自分の兵たちがいる集団へと歩みを進める。

 今日の出征は、あまり大きな声ではいえないが正式な出征ではない。だからこそ割いている兵は、歩兵隊だけで形成された第二師団だけであるし、ルーンミッドガッツ王国騎士団の主力ともいえる騎兵隊の第一師団、第三師団は第二師団がこうやって戦地へと赴くことすら聞いていないはずだ。それでも現実問題、十日から一月はかかるだろうと目算されているので、適当なこじつけ理由でもつけられているだろうけれど。ひょっとすると、自分たちは今頃軍事訓練といって野山を駆け巡っていることになっているのかもしれない。その任のほうが、どれだけ気が楽なことか。

 そこまで思い至って、はたとセイレンは軍靴を止めた。しまった、自分の妹分の様な後輩剣士、イグニゼム=セニアにその間修練をつけてやれないと言い伝えるのを忘れてしまっていた。あの子のことだ、きっと目を覚まして幾分も経たずに修練場で自分のことを待ち始めるだろう。まだ流石にこの時間に起床することはないとはないだろうが、後数刻もすれば起き始めるに違いない。

 引き返して言うべきか、とも思うが、そんなことをしていては出発の時間に遅れてしまう。自分は第二師団を預かる身、つまり、他の騎士たちへの模範で在らなければいけないのだ。そのような私情で皆を待たせることなど、断じて許される好意ではない。
 それに。まだ幼き身でありながらも、一端の剣士としての心構えを持つセニアもそれをわかってくれるだろう。
 少しばかり憂鬱な息をついて、再び凱旋門、もとい南門へと歩みを刻もうとした、そのとき。

「お待ちくださいな」

 朝焼けが始まろうかという町に、静かな声が凛と響いた。

「……早いな、マーガレッタ」
「貴方もつれない殿方ですわね。連絡も無しに往こうとするなんて」

 起こさないように、できるだけ静かにベッドから抜け出してきたというのに。
 苦笑しながらその声のほうへと彼が振り向く中、群青の空に似た色の聖衣に身を包んだプリーストは、困ったように眉根を寄せて彼の挨拶を聞き流した。
 少しばかり後方にいた彼女は、彼へと距離をずんずんと大またで詰め寄り、下から彼をむくれながら睨みつけた。その視線に、セイレンの目が左から右へと彷徨い泳ぐ。返す言葉も無いとは、まさにこのことだ。

「今度は何日空けるつもりでしたの?」
「……と、十日だ」
「嘘ですわね」

 きぱっと彼の言葉をにべも無く否定したマーガレッタ=ソリンは、腰に両手を当てたままじいっと彼の顔を覗き込む。部下やセニアの前では一度たりとも見せたことがなかっただろう狼狽の顔を浮かべて、セイレンはマーガレッタの視線から逃げるかのように夜明け空を見上げた。

 既に空にいた野鳥は消え、門の下では痴話喧嘩を始めた我らが団長と見知らぬプリーストとの一挙一動をただ食い入るように見守る歩兵隊以下十名の剣士たち。
 そんな何ともいえない朝焼けの中、マーガレッタは朱色の唇を開く。

「う、そ、で、す、わ、ね?」
「……一ヶ月だ」
「ほら見なさい。全然違うではありませんか。二十日ですわよ、二十日。そんなにあれば、きっと主す
ら欠伸をして待ちぼうけてしまいますわ」

 いや、君らの信仰する神様だろう。欠伸させていいのか。
 思わずそんなことを心中で呟いてしまうが、彼女のむくれた表情にその言葉をぶつける勇気なぞ、例えバフォメット相手であろうと斬りかかるさしものセイレン=ウィンザーですら持つことなど出来なかった。

「何処へ赴きますの?」
「それは言えない」

 しかし、その言葉が出たとき、セイレンは半ば反射的に首を振っていた。

「……言えないって、それがわたくしに対する言葉ですの?」
「悪い、これは言えない」
「あら。あらあら。珍しいですわね」

 これほどまでに強情に突っぱねたセイレンに、マーガレッタは目を丸くして自分の目の前に立つ師団長の顔を見つめた。彼の顔は先ほどのやり取りでまだ狼狽が少し残っているものの、その瞳だけは気がつけば自分を見下ろしていた。その瞳に写るのは、少しの拒絶とそれよりも硬い彼らしい実直な意思。
 これから聞き出すのは、今から彼を送り出すまでの僅かな蜜月では足りないと察したマーガレッタは、すいと体を後ろに下げて柔らかくターンを刻んだ。彼女の蜂蜜色の髪が朝焼けの空に反射し、まるで燐光を残したかのように空に軌跡を残す。
 そして、彼のほうへ、何故か寂しげな面持ちでマーガレッタは呟いた。

「帰って、来てくれるのですわね?」
「……? ああ、当然だ。決まっているだろう」

 朝焼けの光が射す。もう宵も明けて、町が動き出す時間だ。

「それでは、お気をつけてくださいね」
「ああ、往ってくる」

 マーガレッタの質問の意図が少し気になる。今まで何度も出征に赴いたが、先のような笑顔で送られたことはただの一度たりとも無かったはずだ。問い訊ねようかとも思ったセイレンは、ふと空を仰ぎ見た。空の明け方から、これ以上仲間を待たすことはできないことを知った。
 ゆるりと首を振る。彼女のことだ、たとえ自分がいなくともしっかりやれていくだろう。
 彼女との別れは名残惜しいが、今更もう大げさな出征の別れはいらない。そんなものは、自分が騎士団に入り、彼女が聖堂院に入ったときからもう何度も繰り返し繰り返し行われてきたものだ。
 ああ、そういえば。

「マーガレッタ!」
「はい?」

 くるりと踵を返して町へと戻ろうとしていたマーガレッタの背中へ、セイレンは声をかけた。

「君も明日から、シュバルツハルト共和国のほうへの布教の旅だろう。決して楽な行程ではない。気をつけてくれ」
「その言葉、そのまま貴方にお返ししますわ。いつも誰が貴方の怪我を治してあげてると思っているのです?」
「ぐ」
「それでも、ありがたく頂いておきますわ。早く帰ってきてくださいまし。わたくしも、きっとたくさ
ん貴方に話したいことがあるはずですから」
「……ああ、わかった。それと、セニアには――――」
「わかっています。適当に答えておきますわ」

 くすくすと笑うマーガレッタに、セイレンは小さく頬を掻いた。まったく、何もかもお見通しらしい。

「よし、では、一月後に」
「はい。貴方も、お気をつけて」

 そうして二人は朝焼けの凱旋門で別れ。

 セイレン=ウィンザーはイリーガルな出征中に消息を絶ち。
 マーガレッタ=ソリンはシュバルツハルト共和国の企業都市リヒタルゼンで、同じくその消息を絶った。

 非公式出征だったが故に、国の調書には載らず、プロンテラ騎士団第二師団は事実上登録から抹消。その後新たに師団長を置き、組織としての運営は滞りなく順調に循環していた。
 そしてプロンテラ大聖堂も今回の事件を受け、シュバルツハルト共和国への布教を断念。変わりに国内への布教へと励み、アサシンギルドなど多数のギルドとのパイプを形成することとなった。

 かくして、歴史上からセイレン=ウィンザー、マーガレッタ=ソリンの二つの名は抹消され。

「――――セイレン兄様」

 一人の少女が、彼らの後を追うように騎士団を離れ。


 かくして、朝焼けの別れより一月後。
 皮肉にも、彼らは一同に、介した。
[PR]
by Akira_Ikuya | 2007-05-30 01:05 | 二次創作


<< うーん。 魚介類ステージ? >>