Story3 - Scene2

 ちょっと内容的に短いですが、今夜のガンスリ祭りに参加したいため途中で投下。ハワードの部屋編です。別にウホッなネタはないのでそういうの目的な人にはごめんなさい!
 いや、俺が苦手なだけなんですが_| ̄|○

 この後にセシル編と続いて一応雑炊粥は終わります。多分。
 しかし、筆が乗ってるときと乗ってないときの文章の差が激しいな、俺……。



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 寝たふりをしているセイレンと、それに気づけないまままじまじとセイレンの寝顔を見つめていたセニアの二人を置いて、エレメスは後ろ手で扉を閉めた。中からは両者とも動いているような気配が感じられない。またさっきみたいに、セニアはセイレンの寝顔を見て理性と本能と格闘しながら硬直して、セイレンはセイレンでそんなセニアを狸寝入りのままセニアの行動を待っているのだろう。起きているのなら教えてあげればいいのに、と、エレメスは苦笑してお盆を持ち直した。

 だが、そこでふと気づく。盆の上に載った器は、残り一つ。ハワードの分だけ。
 流石にこれを盆に載せて運ぶ必要などないだろうと、エレメスはお盆を脇に抱えて直接器を手に持った。掌にじんわりとぬくもりは伝わるが、出来立て特有の焼けるような熱さは消えてしまったようだ。冷めてしまっては、せっかくの特性、、粥も美味さをなくしてしまう。
 少しばかり申し訳なさを感じながら、セイレンの部屋の隣にある自室を素通りする。ハワードの部屋はそのもう一つ向こうの部屋だ。
 ハワードの部屋のドアノブを手に取った。中から少しだけ動いている気配がする。安静にしておけと昨日言い聞かせたはずだが。

 コンコン、と軽くノックをした。

「ハワード殿、入るでござるよ」
「おぉ、エレメスか。開いてるぞ」

 扉を開けて、まず目に入ってきたのはテーブルの上に散らかったままの工具類だった。ペンチや岩砕きなどの工具のほかに、いくつか鉱石も見受けられる。昨日の夕食を持ってきたときはこんなもの散らかっていなかったから、おそらく今朝おきてから取り出したのだろう。昨日自分が言ったことが華麗にスルーされている。
 テーブルにごたごたと置かれている様を見て、エレメスはやれやれとため息をついた。

「まったく、悪化するから安静にしておけといったでござろうに……」
「何か動いてないとどうにも、な。指先の感覚も忘れちまいそうだったし」
「多少は元気になったようでござるな」
「お前相手に悪戯する元気も出てきただぜ?」
「薬包に劇物を混ぜてほしくなければ、その口を閉ざすがいいでござるよ」

 返ってくる声に、昨日までかぶさっていただる気が抜けて、ほぼいつもどおりの声音だった。どうやら、セニアと同じく順調に快調へと向かっているらしい。自分が来るまでもなかったかと思いつつも、とりあえず病人なのだから一応看病はしてあげたほうがいいかとエレメスは苦笑した。
 ハワードの軽口に同じく軽口を返したエレメスは、枕元に金鑢と短剣が置いてあるのに気づいた。鉱石製造だけでなく、どうやら武具を手入れできるほど回復しているようだ。
 武具は鉱石を扱うよりも、もっと集中した精神と指先の練度が必要になる。熱などに浮かされている頭や指先では、到底できるはずがない作業だ。

「ふむ、見るにかなりいいようでござるな」
「ああ、おかげさんでな。激しい運動は無理だが、柔軟ぐらいはできるぜ」

 数日お風呂に入れていなかったせいで濃緑の髪の色が少しだけ濃く見えて頬が少しそげているものの、表情なども生き生きとしている。
 ベッドに上体を起こした体勢のまま、ハワードはにかっと笑った。

「いつまでもお前らの世話になりっぱなしじゃぁな。よしエレメス、お前も今度ぶっ倒れろよ」
「絶対にごめんこうむる。何か嫌な怖気しかしないでござる」
「つれないヤツだな。オレが付きっ切りで看病してやるっていうのに」
「そのほうが危ないでござるよ」

 この体勢ならテーブルに置かずに直接手渡したほうがいいだろうと、エレメスは器をハワードに渡した。そもそも、テーブルを片付けるのが面倒だというのもある。どうせ片付けたところで、暇潰しに鉱石をまた並べるのだろうから無意味だとも言えるけれど。
 ハワードも礼を言いながら器を受け取った。相変わらずごつごつとした彼の手に納まった器は、セニアが持っている器と同じ大きさだというのに嫌に小さく見える。

「む、少し冷めてんな」

 一口、匙で掬って口に運んだハワードは少し眉根を寄せた。
 器を持ったときはじんわりとした温かみがあったとはいえ、やはり中は少し冷めていたようだ。

「ああ、すまないでござる。少しセニア殿と話していたゆえ」
「まぁ、作ってもらってる身分だし文句はねぇけど、他に持ってくヤツいるなら暖めなおしてやったほうがいいかもな」
「そうするでござるか……持ってく相手が相手でござるし」
「ん?」
「セシル殿でござるよ」
「ああ、セシルかぁ。……んぐ。んじゃ、あっためておかないと後がこえーな」
「まったくでござる」

 二人して声に出して笑う。
 その間も、ハワードの匙の動きは止まらない。病人とは思えないような食欲だった。陶器の器に、匙が当たるカッ、カッ、という音がそう広くもないハワードの部屋に響く。

 この調子ならそう時間をかけずに食べ終わるだろうが、かといってここに長居をしていれば更にセシルの食事時間が遅くなってしまう。待っていてもいいが、矢アサにされるのも嫌でござるなぁと心中で溜息をつき、エレメスはベッドの脇から立ち上がった。

「とりあえず、拙者はもう行くでござるから……器は何処か適当に置いておいてくだされ」
「あ、ふぉいふぁち」
「言葉になってないでござるよ」

 ベッド脇から踵を返したエレメスの背中に、呼び止めの言葉がかけれる。せめて飲み込んでから喋れと言いたいところであったが、それでも言葉の意味を理解できないこともなかったのでハワードのほうを振り返った。
 振り返ったエレメスは、思わず目を丸くした。

「……ふぅ、ごっそさん」
「ちょ、もう平らげたでござるか?」
「おぅ。もうちょっと濃い味にしてもよかったと思うぜ」
「そこはカトリーヌ殿に言ってほしいでござるが……まぁ、器は持ってくでござるよ」
「何だ、カトリーヌが作ったのか」

 口元を拭いながら差し出された空っぽの器を受け取りながら、エレメスはとりあえず一つのことを確信した。もうハワードの薬は必要ないだろう。というか、看病の必要性もなさそうだ。
 わざわざ看病に出向いたというのに、早食い選手権に出れそうなスコアで粥を平らげたハワードを、エレメスは思わずジト目で睨んだ。

「どうした、そんな目して」
「何か詐欺に近いでござるよ」
「あ? いや、オレも結構きつかったんだぞ?」
「元気なれば食堂に顔でも出せばよかったでござろうに……カトリーヌ殿も安心するでござるよ」
「何でそこでカトリーヌが出てくんだよ。とりあえず、あいつに粥美味かった、って言っといてくれ」

 心底不思議そうに首を傾げるハワードに、エレメスはそっぽを向いて扉へと歩く。ハワードは自分の体調の良し悪しとカトリーヌについての関係性は気づけていないし、ハワードが良くなった、と伝えても、多分、カトリーヌも「そう、よかった」と返す程度にとどまるだろう。
 それでも、エレメスは実は知っている。ハワードの器に盛られた粥には、実はこっそりと卵が一玉多く入っていて、なおかつ鶏肉が少しだけ入れられていたことを。そして、ハワードが先ほどまでいじっていただろう武具は、剣でも斧でもカタールでも弓でもなければ、魔術師用の杖だったということも。
 二人とも隠すどころか、それを知られても困ることなどないといわんばかりに無警戒なままで。

 もちろん、前者も後者もただの偶然ということだってあるだろう。たとえば、カトリーヌがハワードが快方に向かっていることを知ってわざと卵や肉を入れた可能性だってあるし、斧や刀剣に比べて装飾部位を手入れするだけでいい杖をいじるのは病み上がりの指先訓練にちょうどいいから、という理由だって納得できる。

 けれど、そんな解釈をしなくとも、食べ終わった後にポツリと呟いたハワードの一言と、カトリーヌが器によそっていたときの表情がエレメスの頬を緩ませる。無自覚が故の無警戒。自分の前でそんな表情を見せた二人が悪いのだ、と、エレメスは意地悪く笑いながらハワードの部屋を後にした。
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by Akira_Ikuya | 2006-12-01 19:42 | 二次創作 | Comments(2)
Commented by たまきち at 2006-12-03 01:58 x
カトリン!カトリン!
セシル編期待age
Commented by Akira_Ikuya at 2006-12-03 02:36
カトリン! カトリン!
ハワードとカトリの物凄く微妙な間柄を書きたかったというのに、筆が載らずにものすっごい中途半端な表現になっちゃってすごくしょんぼり。いずれ書き直すかも。


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