Scene9

 生体萌えスレに投下した8話の後編にあたる話です。基本誤字修正。若干表現変換。



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 結局、侵入者は三階でもまだ見つかっていなかったらしい。セイレンに伝え終えたセシルは、再び三階の索敵を開始した。二階部のことを話した際にセニアについてセイレンから聞かれたが、どう答えていいか、セシルにはわからなかった。ただ、エレメスがついているから問題ない、ということしか言えなかった。エレメスなら、親友である彼相手にどう答えただろう。
 あの時、やはり自分はエレメスとともに行かずに、セイレンを呼びに戻ったほうがよかったのだろうか。そうすれば、セイレンが駆けつけて事なきを得たのだろうか。

 カッ、カッと硬質の音を鳴らして、セシルは侵入者を探すべく三階部の廊下を駆ける。

 考えても、纏まらない。しかし、あの時自分は行かなければいけないと思ったのは事実だ。使命感にも似た即断だったと、自分で思う。
 ただ、それは本当に使命感だったのかと問われれば、セシルは閉口してしまう。そこまで使命感が強い人間ではないと言うのは自分で重々承知している。セイレンやセニアのように、全てを自分の責任と感じて動けるほど自己犠牲精神もなければ、生真面目でもない。
 だからあのときの即断が、まるで、自分の意思ではないかのようにも感じているのだ。
 突き動かされた。まさに、その言葉がしっくりくる。けれど、何に?

「……何だかな」

 わかってはいる。突き動かされたのは、自分の中の内なる衝動ではなくて。


 ―――――罠なんていりませんよ


 単に、負けたくなかったのだ。

「――――っ!?」

 走りながら、セシルは一気に熱を持った自分の頬をぱしぱしと叩いた。耳なんて、頬以上に熱を持って赤くなっているだろう。今考えたことを、頭の中からチャージアローでふっ飛ばしたくなってくる。
 自分の思考が考えられなかった。いったい、誰が、誰に、何について負けるというのだ。そんなことを考え付ける自分の脳みそをダブル・ストレイピングで打ち抜きたい。

 けれど、打ち抜きたいということは、つまり。
 自分で、認めてしまっているわけだ。自分の行動を。

「もう、ヤになる、ほんと……っ!」

 敵を探すことに集中しよう。
 セシルは散り散りになりそうだった思考の渦の中で、それだけに集中することに決めた。今あれこれ考えられる場面でもないし、そのまま考えを進めていったら、とんでもない結末にぶち当たりそうな予感もする。その結末を突きつけられることを、恐怖する自分がいる。

 そこまで考えて、角を折れた矢先だった。

「……また!?」

 廊下に敷き詰められていたはずの罠の換わりに広がる、鉄色の砂塵。そして僅かに残る火薬の匂い。
 罠が、粉々に破壊されている。敵がかかって間抜けにも開ききったアンクルスネアではなく、粉微塵へと粉砕された鉄屑へと。
 セシルは今まで考えていたことなどもはや続きを思う余裕すらもなく、その場にしゃがみこんで鉄屑を拾う。

「あつ……っ」

 さらさらと拾い上げた先から零れていくそれは、掌で持つのが少しきついぐらいに、熱い。
 つまり、まだ近くにこれを破壊した人間が、いる。


 ―――――ドッ


「っ!?」

 その先の角の向こう。そこから小規模な爆発音が聞こえた。僅かな残光が廊下の向こうでオレンジ色に輝いている。
 だが、その音は残響さえも残さず、最初の音と光を残し、すぐに消えていった。

「こ、の……!」

 セシルは鉄屑を撒き散らしながらブーツの音を鳴らして走る。
 既に自身の周りには赤紫の紫電が音を立ててうなり始め、鷹の目を宿したその両目は薄暗い三階廊下でさえ事細かに周りの情報を伝達する。
 戦闘モードのスイッチが、切り替わる。リストバンドの留め具を絞る。

 そして、角を曲がった、その先。

「……ちっ、見つかったか」
「―――あんたね、あたしの罠をぶっ壊してくれたのは」

 紫がかかった茶色の大きな羽を持つ鷹をつれ、手元で罠をかちゃかちゃと弄ぶスナイパーが、こちらを睨みつけていた。ブーツの足音でこちらが近づいてきてるのを気づいていたのか、耳にかかろうかという金色の髪をめんどくさそうに掻き揚げるその仕草に、セシルの柳眉が釣りあがった。
 そんなセシルを見ながら、透かすようにスナイパーは切れ長く鋭い瞳をセシルにぶつけた。

「そうだといったら?」
「……あんたを同じ末路に叩き落してあげるわよっ!」

 言葉と同時に、セシルは矢を番えた。
 矢筒から矢を取り出すのが早かったか、それとも、相手が背を向けたのが早かったか。
 セシルは、口元に笑みを湛える。この先のルートはセシルのテリトリーだ。何処に何の罠を仕掛けたか、全部地形と共に頭に叩き込まれている。三階部の罠地帯は、自分の庭と言っても過言じゃない。
 相手の後方にはまだ解除されていない罠が敷き詰められていて、すぐには逃げれない。対して、こちらは既に弓を構え、矢を取り出した直後。

 相手はこの矢を避けることも逃げることも出来ず、一連の不可解な罠破壊事件は幕を閉じる。

「―――シッ!」
「ご丁寧に罠敷き詰めて―――かえって、ありがたいけどね」

 その、はずだった。
 スナイパーが腰のバッグから取り出したのは、余りセシルには馴染みのない形のした直方体の物体。その物体の側面は、オレンジと赤のカラーリングで統一されていた。一瞬見ただけでは、それが何かセシルにはわからない。ただ、記憶の片隅に僅かに残る、その模様。
 その掌サイズの直方体を片手に二つ握り締めたスナイパーは、セシルの矢を上着の裾を犠牲にしてぎりぎりでかわし、

「弾け飛べ」

 罠の密集地帯に向かって、その直方体の箱を投げ入れた。
 刹那、閃光とも言える光と爆発音が廊下を炙る。

「っ」
「ファルコンアサルトっ!」

 いきなりの光に咄嗟に目を覆ったセシルに、飼い主の命令で飛来してきた鷹が襲い掛かる。完全な不意打ちであったが、セシルは身をよじって何とか直撃を避けた。しかし、さすがに全ては避けきれず、鷹の鋭い爪で左肩をえぐられたセシルはその場に片膝をつく。
 パタタッと血を撒き散らし、鷹はすぐさま飼い主の肩へと戻った。一撃離脱を狙うヒットアンドアウェイ。セシルが傷口に手をやると、おびただしい量の血が肩口から溢れていた。

 スナイパーの後ろには、元罠だった鉄屑が、爆風であちらこちらに舞い散っている。
 その様を見ながら、セシルは歯噛みしてスナイパーを睨み付けた。

「……そう、どうやったらあそこまで罠が壊れるかと思ったら、そういうことね……っ!」

 ハワードからの伝言では、爆発物か何かによる破壊、と言われていた。
 確かに、アレは爆発物といっても過言ではないだろう。多くの罠を巻き込み、そのまま中央で爆破。辺りに爆発物が多ければ多いほど威力を増す、小型爆弾型の、罠。元々は軍列となって集まった密集地帯の敵を粉砕する、凶悪とも言える、罠。
 セシルの記憶と、目の前の現状がようやく一致する。

「―――クレイモアトラップ!」
「誰もこんな使い方するなんて考えないよな。だからこそ使えたわけだが」

 スナイパーも弓を取り出してセシルへと構える。セシルの弓より一回りほど大きく、その両翼合わせるとセニアの胸までの高さもありそうな、巨大な弓。
 片膝をついたセシルならば止めをさせると思ったのか。それとも、これより先に逃げることは危険を意味すると察したのか。澄ましたままの彼の表情からは、読み取れない。

「あんたの目的は何?」

 痛む肩に顔を顰めながら、セシルも弓を構える。左肩に力が余り入らない。それでも、溢れる血を無視して腕を広げ、弓を引き絞った。
 先ほど相手が避けたのは、攻撃が読まれたからだろう。あの動きを見るに、自分の攻撃をそう連続で避けられるような相手には思えない。
 だからこそ、防御を捨てたその弓の威力は想像ができない。あれほど大きな弓を、軽々と引き絞っている。

「秘密。とはいえ、俺も雇われの身だけどね」

 相手も自分が次は避けれないことを自覚しているのか、隙を見せない構えでセシルの動きを牽制していた。まるで氷像のように冷たい視線でセシルを射抜く。

「罠を壊した意図は?」
「それも秘密」
「何故一人で潜伏したの?」
「それも秘密」
「そう、じゃあ」

 ギリギリ、と弓を絞る。弦が限界以上の力に悲鳴を上げる。
 一撃をはずせばおそらく相手から来る。しかし、それは相手も同じ。
 そしておそらくお互い、相手の矢をかわす技量はない。万全状態のセシルならば避けることも可能だが、体力を使い果たしている上に左肩の怪我で、おそらく完全回避は不可能だろう。
 だとすると、射出するのは、

「死になさい!」
「てめぇがな!」

 ―――――同時っ!

 互いの矢は、コンマゼロ秒の狂いもなく同時に発射された。空気を裂く二重の音が狭い廊下を打ち鳴らす。
 彼我の距離は十メートル。矢が到達する時間など、ものの数秒もかからない。

 そして発射されたのと同じく、両矢は、同時に着弾した。

「ぃ、った……」

 カラン、と、セシルの弓が廊下に落ちた。右腕から流れる血が、ぽた、ぽた、と廊下へと落ちる。
 痛む左肩を動かし、セシルは右の二の腕に突き刺さった矢を引き抜いた。抜くときの激痛に、額に汗が滲む。

 軍配は、どちらにも上がらなかった。

 相手の気配が消えるのがわかる。矢を何処に受けたかまではわからないが、自分の矢を食らって無事だとは思えない。たとえ逃げたとしても、手負いならばセイレンたちがカタをつけてくれるだろう。
 相手の気配が消えた場所へと、歩み寄る。そこには、既に鉄屑となった罠の残骸と、数枚の紙切れが落ちていた。

「何だろ、これ?」

 ざっと目を通すも、A4サイズの紙にびっしりと文字が書かれていたためセシルは思わずそれを遠ざけた。流石にこの暗いところで全部読むのは骨が折れるし、疲れているこの頭でどれだけ理解できるかわからない。そもそもが、あまり文章の類は自分は得意ではない。カトリーヌ辺りに見せたら嬉々として読み始めそうだけれど。
 後で部屋に帰って読もうと、セシルはソレを折りたたんで矢筒の中に入れた。

「それにしても、まさか撃たれるなんて……って、あ、れ……?」

 一瞬の眩暈。
 立ったいられなくなり、セシルはぺたんとその場に座り込んだ。

「どう、した………んだ、ろ……」

 立ち上がろうと足に力を入れるが、まったく足はぴくりとも動かない。右手の矢傷と左肩の爪傷が痛むが、それを無視して両手で立ち上がろうとしてみるも、傷口が傷むだけでやはり力が入らなかった。
 ただ、血だけが流れ出る。

 急に頭が回らなくなってきた。
 体が鉛のように重く、今にもまぶたを閉じそうになるほど意識がふらふらしている。血が流れ出る傷口を見る視界は靄がかかったかのように霞み、自分の体が二重に見える。

 あの螺旋階段を全力疾走で往復し、敵と二回交戦。確かに体力の限界と言うのも頷けるが、ここまで疲弊していたのなら体が前兆を訴えたはず。それに、傷と言う傷は今の攻撃で受けただけだ。それにしては、この状態は異常すぎる。
 それに、一撃矢を食らっただけにしては、右腕の傷口から流れ出る血の量が、多い。

 まさか、毒?
 セシルの考えはそこにたどり着いたとき、遠くから、ブーツが響く音が聞こえてきた。

「やっぱり先の爆発はセシル殿でござったか……」

 座り込んだまま、廊下へと駆け込んできた人物をぼんやりと見上げた。
 首元に巻かれた赤いスカーフと、暗闇で薄く月のように光る金褐色の瞳が、目に入る。

「エレ………メス?」
「……? セシル殿、どうしたでござ―――これは」

 座り込んだセシルを引き起こそうとセシルへと近寄ったエレメスは、どうやら即座にセシルの状況を悟ったようである。流石に毒はアサシンの十八番と言うだけはあるのだろうか。「ちょっと失礼」と断ってから、エレメスはセシルの頬に触れまぶたを少し下方向に引っ張り眼球を覗き込む。そして一つ頷くと、辺りを見渡した。

「……」

 セシルの傍らに落ちていた矢を拾い、エレメスは矢尻の先についていたセシルの血を指先に掬い、ぺろりと舐めた。そして、すぐさまそれを唾に絡めて吐き捨てる。
 その顔は、百の苦虫を噛み潰したかのように顰められていた。

「……また珍しい毒でござるな。これにやられたのでござるか?」

 セシルの横にしゃがみこみ、セシルの右腕をつかんで持ち上げる。矢傷が痛み、思わずセシルは顔を顰めた。

「………エレメス、痛い……」
「ちょっと我慢するでござるよ」

 嫌がる口調にも、いつもの覇気がない。エレメスはセシルの顔を見やる。真っ青になった唇に、焦点の合わない青い双眸。揺らぐその両目を見るに、どうやら、もう視力も朧らしい。
 この毒の詳細はエレメスも知っている。ノーグロードの二階層に生息していると言われている蠍型のモンスター、ギグの尾っぽから精製された猛毒。即死性はないものの、体の自由を奪い、血小板やその他の自衛作用を著しく低下させ確実に死に至らせる毒。これが体に回りきると、たとえセシルであろうと長くは持たないだろう。

 エレメスは毒が回り始めていることを再確認し、自分のスカーフを適当な長さで切り裂いた。そして、それを傷口より若干上方向に位置するところに強く縛りつけ、

「ちょ……っと、あんた……何、やってるのよ」
「今すぐには解毒剤は作れないでござるから……気休めでござるよ」
「……っぁ」

 何のためらいもなくセシルの傷口に口をつけ、血と一緒に毒を啜り取る。セシルは、思わず小さく声を漏らした。
 ある程度口に含んだところで、唾に絡んで廊下に吐き捨てる。一度で全部の毒を啜りきれるほど、エレメスには自信は無かった。ある程度の毒ならば自分の体の中で分解できるよう修練は積んであるが、うっかり飲み干してしまうと毒素が強すぎた場合自分も二の舞になる。それほどまでに、この毒は毒性が強い。
 少しずつ含み、多量の唾液と絡ませる。それを、何回も繰り返す。

「……んっ」
「痛いでござろうが……できるだけとっておかないと、後で響くでござる」
「ゃっ……ぁ……っ」

 何度にも渡って繰り返される吸血に、不思議とあまり抵抗感はなかった。傷口に舌をこすりつけ、エレメスは血の分泌を促し続ける。その度に、ぴりぴりと痺れるような、力が抜けていくような、何とも言いがたい触感が背筋をぞわっと走り抜けた。
 初めて感じるえもいえぬ感触に、思わず声が上がってしまう。その感触を言語化することすら、今のセシルの頭ではできそうにもなかった。エレメスの舌のざらりとした感触だけが頭の中でちろちろと動き、ただ、傷口を吸われる感触に、僅かに身動ぎをする。
 喘ぎともつかない呻き声を上げたセシルに対し申し訳なさそうな顔をして、エレメスは再び傷口を口に含んだ。

「これくらいでいいでござろう……後は」

 それから五分程度毒を吸い取ったエレメスは、先ほど毒を止めるためにきつく縛ったスカーフを解いた。
 腕の圧迫感が消え、セシルは気づけば閉じていた目を開ける。薄っすらとだが、一番きつかったときに比べれば若干視界がクリアになった気がしていた。

「できればもうちょっと清潔なものがあればよかったのでござるが……トリスたちに全て使ってしまったでござるよ」

 苦笑しながら、エレメスは解いたスカーフの切れ端をセシルの患部にまきつけていく。まるで飾り布のように巻きつけられた、包帯代わりの赤いスカーフ。
 まだ少しぼーっとするが、毒の進行は食い止められたようだった。体全体にだる気はあるものの、左手を開閉させてみた。

「……腕、動く」
「刺された場所が右腕でよかったでござるな。心臓から遠い位置でござったから、毒が最後まで回らなかったのでござろう」

 にぎにぎと体の末端が動くことを確認したセシルは、それに遅れて左肩の裂傷が疼きだしたことに気づいた。どうやら、今まで毒のせいで痛覚まで朧になっていたらしい。その割に吸引される感覚は残ってた辺り、どうにも現金な体だとセシルはぼんやりとした頭で思った。
 セシルの顔がしかめられたのに気づいたのか、スカーフを巻き終えたエレメスは左肩の傷に気づき、

「これは姫に治してもらったほうがよさそうでござるな……セシル殿、歩けるでござるか?」
「ば、バカにしないでよ。歩くぐらい……って、あれ」

 必要以上に優しく接してくるエレメスに、セシルは覗き込んでくるエレメスの視線から逃げるように立ち上がった。
 しかし、立ち上がることはかろうじて出来るが、足が巧く動いてくれない。立てるだけまだマシになってはいたのだが、歩けるほど平衡感覚は回復していないようだった。血を流しすぎて貧血になったか、それとも、毒の余韻か。立ち上がった瞬間、すぐさま足から力が抜けていく。
 壁に手をつき、そのままずるずるとまた座り込んでしまった。

「う、うぅー……」
「やっぱり無理でござるか……セシル殿、ちょっと失礼」
「きゃ、ちょっ……っと! おろしなさいバカ!?」

 自力で歩くのは無理そうだと判断したエレメスは、セシルの体を抱き上げた。右腕はセシルの背中の後ろに回し、左腕はセシルの両膝の裏に回し、セシルの顔はエレメスの胸の位置。いわゆるお姫様抱っこ。
 いきなりそんな恥ずかしい格好で抱きかかえられたセシルは、エレメスの胸板をばこばこ殴りながら抗議の声を上げた。殴る度に左肩と右腕が痛いが、今は痛覚より羞恥心の方が上回っている。

「と、とと、危ないでござるよ、セシル殿」
「危ないのはどっちよ!? って、きゃあっ!? あんた何処触ってんの!?」
「セシル殿が暴れるからでござる!?」

 もはや毒のダメージは何処へやら。顔を真っ赤にさせて暴れるセシルに、エレメスは困った声を上げながら廊下を歩く。
 だが、困った声を上げたいのはセシルも同じである。さっきまでは意識が朦朧としていたため何も感じる余裕はなかったのだが、冷静になるにつれて今までどれだけ恥ずかしいことをされていたか考える余裕が出来てしまったのだ。
 脳裏でぐるぐると、今までの光景がリプレイされる。

 敵のスナイパーと遭遇するまで。
 傷を負った後。
 エレメスに抗議の声を上げたとき。
 エレメスの唇が自分の二の腕に触れたとき。
 エレメスの舌が――――

「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!」
「ったー!?」

 振り上げた拳がエレメスの顎にスマッシュヒットし、思わずエレメスは情けない声をあげてふらふらと足が蛇行する。
 セシルは右腕に巻きつけられたスカーフを、左手で照れ隠しにぎゅっと握り締めた。

 マーガレッタの部屋にたどり着くまで、セシルは結局、まともにエレメスの顔は見れなかった。


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by Akira_Ikuya | 2006-09-08 11:17 | 二次創作


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