Scene30 - 2

 ……あれ、もう6月?

 4月から変わったプロジェクトで死んでたりで何かすっかりこっちに書かなくなりました。ツイッターも言うほど顔出してませんが、とりあえず何とか必死に生きてます。
 コミケも無事当選したようで、その原稿も頑張っていかなきゃいけないところ。とりあえず、Scene30が全部終わったら原稿着手することにします、うん。今年の夏は現地にはいけない予感がしますが。

 そんなわけで、Scene30のPart2。何かオリキャラが割りと全部もっていっちゃった感がある話です。



//





 ルーンミッドガッツ王国の魔法学の心臓部にして、王国唯一と言っていい魔法学校『アカデミー』が存在する西方の都市、ゲフェン。英知の証として空高く聳え立つゲフェンタワーを象徴として、膨大な魔力と学術が眠り、そして、その魔なる力に引き寄せられる魔物たちの攻勢から日々脅威に晒されている都市でもあった。
 そのゲフェンを防衛する箇所としては、大きく三箇所存在する。まず北方、ミョルニール山脈の麓に砦を築き、プティットやホーネットといった飛行種族との戦闘に特化した第一防衛拠点、そしてゲフェンより更に西方、西の果てに存在する古びた古城、グラストヘイムからあふれ出てくる死霊や悪霊を塞き止めるために存在する第二防衛拠点。最後に、プロンテラより南西に位置するオーク種族、ゴブリン種族と言った、対亜人種用に作られた第三拠点である。
 プロンテラ騎士団に入団した者は、まずこのいずれかの防衛拠点に配属される。騎士団の業務として国防が大きなウェイトを占める以上、新人の育成として魔物への迎撃方法やチーム間での連携を取るにはうってつけであった。また、騎士として配属された以上、この防衛任務にはもうひとつ大きな意味がある。騎士として一人前として認められ、晴れて冒険者の仲間入りできるようになるのは、ここでの戦果を通じて、各師団を構成するいずれかの連隊長となることが必須条件なのである。経験を積み、リーダーとしての素質があると認められた者だけが隊長となり、そのまま騎士団に残って国のために尽くすか、一人前の冒険者として旅立つかの選択を選ぶことができる。騎士団として残る場合は連隊長から更に上の役職を目指し、後継者の育成、または騎士団の運営に携わっていく。
 それ故に、それぞれに配属された騎士たちの士気は高い。そして、ゲフェンという都市が存在する以上、半永久的にそこの拠点には人が存在することになるので、物流や金の流れが発生する。それぞれの拠点を中心に、行商や武器商が出入りするのは常として、騎士の武具の修理、精錬のために鍛冶屋が工房を構えたり、その拠点に居ついて商売を始める者、あるいは現地で結婚し家族を作り、そこを自分の生活区域に変えてしまう騎士もいた。
 それぞれ三つの防衛拠点は、ゲフェンを守る、という大義に加え、そこに集う人々全ての命をも守護する要塞という側面もあった。その砦が陥落するということは、ゲフェンへの直線通路が開くと同時に、何千もの命が巻き添えになるという現実が待ち受けている。

「……それぐらいのことは、私も入団時の座学で心得てます。今更何なんですか、もう」
「今から自分が指揮を執るんだ。少しのおさらいと思って聞いて起きなさい」

 騎乗槍隊で構成された第五部隊師団を引き連れて先頭を駆るセイレン=テルフォードは、道すがらセニア=トリスタンに切々と今回の任務についての説明を続けていた。三箇所の防衛箇所については、騎士団入りしていの一番に教えられてそのまま現地へドナドナされていくため、防衛経験者ならば身に染みてわかっている。それでも、思考回路の約八割を心配、残りの二割を慎重という具合でブレンドされているセイレンにしてみればまだまだ語り足りないことが多いのだろう。ぼやくセニアをなだめて、ペコペコの手綱をピンと引っ張る。プロンテラから南へ抜けて西へ折れる平坦な野道に、ペコペコの啼く甲高い声が響き渡る。

「実際に剣をとって盾を持って戦うときでさえ、その戦地の背景や戦の経緯を知ることはとても大事なことだ。何のために戦うかを理解しなければ、騎士として、または隊の一人として戦うことができないからだ。そして、重ねて言うが、今から君はそこで指揮を執るんだ。そのためには、もう一度知っておいても損はないだろう?」
「……」

 至極正論ではある。しかし、正論であることと、同意できることは通常得てして逆ケースのことが多いわけで。
 セニアはセイレンにばれないように、吹き抜けてくる初夏の風に双眸を閉じる。ヘルムで覆い切れなかった菫色の後ろ髪がなびき、露になった耳に触れた風がくすぐったかった。

「……ニア、セニア。聞いているのか」
「あ、はい。聞いています。すみません、目にごみが入ったみたいで」

 しれっと答えながら、セニアは数日前から行われていた作戦会議の内容を反芻する。
 防衛拠点の損壊度はそう酷くはないが、現地の騎士たちの消耗が予想外に激しいらしい。ゲフェンへの直線状の距離は比較的他の砦に比べて短いのだが、その最短ルートはゲフェン南に広がる湖によって渡航不可になっているため、亜人たちの住処から東から北へと大きく迂回する必要がある。その二つの合流地点に設置してある拠点なので、二勢力によって争わせ、どちらかが撤退したときにこちらから出向いて叩く、というのが常套手段になっていた。しかし、最近はその戦術が通じなくなっており、二勢力は協力こそしないものの、一心不乱にこちらの砦に食いついてくるというのだ。弓兵、魔術兵などが合流している混成軍ではなく、純粋な騎士で構成されている関係で篭城戦はあまり得意ではない防衛部隊は、その突然の行動パターンの変化についていけず、結局要塞を背後にした防衛陣を組む結果となる。
 基礎体力、身体能力で明らかに人類を凌駕する亜人たちに真っ向からの勝負を挑むなど正気の沙汰ではなかったが、それでも、冷静さの欠片もない亜人の攻撃はまだいくらかかわしようがあった。普段組んでいる突撃隊形もとらず、共闘もせず、乱戦もせず、まるで何かの香の導かれる虫のようにただひたすら突撃を繰り返す亜人たちは、御しやすいとともに、一種の狂気すら伺えた。

 防衛拠点であるにも関わらず、篭城戦が苦手というのも変な話だが、騎士に成り立てものをメインに構成しているため仕方がないとも言えた。国防として防衛を担ってはいるものの、そこに他のギルドの人員が加わらないのは古い伝統に囚われている王族関係者が頑なに他ギルドの増援を拒んでいる、とセニアも小耳に挟んだことがある。同じ王族、しかも直系として申し訳ないと思う気持ちとともに、此度の防衛戦に負けられない理由が更に追加された。

「負けられませんね」
「ああ、そうだ。私たちが負ければ、後ろにいるのは武を持たない人々だ。私たちには、逃げ場も死場もない」

 セニアが呟き、セイレンが重ねた。
 セニアは後ろを振り返る。プロンテラ騎士団の正団章をつけた六個連隊からなる八十名の槍兵たち。百にも満たない騎士の数を、充分と見るか少ないと見るかは、自分の手腕にかかっている。これで後は、バックを固めてくれる弓兵や術兵がいてくれたら、色々とやりようはあるというのに。

「そして敵は死地を求めるがごとく突撃を繰り返す、でしたよね。……狙いさえもわからない攻城、本当に魔物の理というのが理解できません」
「これまではある程度攻防が続けば、奴らも退いて行ったんだがな……下手すれば、最後の一兵までも叩く必要があるかも知れないな」

 亜人だろうが魔物だろうが、生ける者には当然のことながら種の生存本能が根底にある。いくらゲフェンに根付く魔の根源に誘われて侵略を続けても、引き際というリミット値が存在する。痛みわけ、と言うわけではないが、そうやって敵は撤退し、騎士団員は次の侵略までに英気を養い、訓練と修練を重ねる。
 しかし、今回の侵略に関しては、敵に撤退の二文字が存在しない。延々と、何処から補充されているのかわからないぐらい敵が襲い掛かってくる。幸いにして活動時間には限界があるのか、もしくは単に夜は目が利かないのか、夜間における侵略はなかった。もし日夜問わず攻勢に出られていたら、とてもじゃないが要塞の維持だけで精一杯で、他のコロニーの防衛まで手が回らなかっただろう。
 それを僥倖と見るか、それとも、そこまで追い詰められている現状に唇を噛むか。

「長く、なりそうだな」

 セイレンの言葉に、セニアは神妙に頷いた。
 自分たちの役職の都合上、そこにずっと留まることはできない。けれど、決戦はしばらく続く。おそらく月を挟んで、何度もここを往復する羽目になるだろう。いつかは見飽きるようになる景色になるかもしれないが、セニアは今はただ、視界の遥か先に見える森林とそこまで続くこの平原を、瞼の奥に焼き付けた。








「故に、かくあるべきだと、我輩は思うわけなんだよ。どう思うよ?」
「どう思うよ、と、言われましても……だからこうして我々が命張って守ってるんじゃないですか」
「まぁ、そらそうだわな。だが、我輩たちは悲しいことに命は一個しかねーわけでな。この要塞を守ってたら命を変わりに失うんだわ。いくら我輩でもそこは抗えん」

 肩を越すほどの長さの三つ編みをふらふらと左右に振りながら、どうにもやる気のなさそうに言って彼はため息をこぼした。ため息をつきたいのはこちらだといわんばかりに、その後ろを歩く濃紫のマフラーを巻いた青年は肩を落とす。双方年はおそらく三十路は越えない程の青年なのだが、肩当には第五師団の証である槍と盾の団章が刻まれていた。三つ編みの青年の断章には、槍の上に金の冠が更に彫られていて、マフラーを巻いた青年には盾の上に銀の王冠のマークが刻み込まれている。
 武器の上にある金の王冠は師団長の証。防具の上にある銀の王冠は副師団長の証。六個連隊計八十名で構成される第五師団の上に立つ二人は、その威厳も何処へやらと言わんばかりに適当なことを言い合いながら廊下を歩いていく。

「そもそもだな、確かに話には聞いていたが期間が長すぎるわ、期間が。半年だぞ? 我輩はここにきて誕生日を一度迎えてしまったわ」
「あ、そうだったんですか。おめでとうございます」
「祝辞はいらんよ、ちなみに君ら誰一人として我輩を祝わなかっただろう、当日に」
「いや、そんなこと言われましても……知りませんよ、団長の誕生日なんか」

 本当にどうでもいいことを言い合っていると、廊下の反対側から同じ団章をつけた騎士たちがやってきた。三人組の騎士は二人の姿に気づくと、慌てて敬礼して横を通り過ぎていった。その背中に、「ごくろーさん」という気の抜けた声を送って、師団長は隣の副師団長へと振り返る。

「で。何の話だったかね」
「別に何かを目的として話していた覚えはありません。いつもの団長の愚痴です」
「愚痴か。愚痴は大切だと思うんだよ、我輩は。愚痴を言わなければこの職なんぞやってられん。それに何故か知らんが我輩がやるのはいつも何処かの拠点の留守番だ。愚痴の一つも出る」

 留守番じゃなくて、篭城戦とか、防衛戦を任されてるんだけどなぁ……。師団長のあんまりといえばあんまりな言葉にさしもの副師団長も乾いた笑いがこぼれた。今までこの人の下について何度も防衛戦や篭城戦を繰り返し、中には死戦といっても差し支えのない修羅場をくぐってきた。その度その度に、騎士団から、あるいは、恐れ多いことにルシル王本人から勲章や褒章をいただいてきたというのに、ただの留守番としか思っていなかったのだろうか。授与するとき、妙にぼんやりとしていたり目の焦点があってなかったりしていたが、何故授与しているのかすら理解していなかったのか。
 ああ、胃が痛い。まるで何処かの騎士団団長みたいなことを思いながら、マフラーに口元をうずめた。

「どうしたかね。ため息なぞついて。君も愚痴を言いたまえ。我輩はルーウェンスが愚痴を言うところをそういえば見たことがないぞ、ささ、遠慮なぞしないで言うがいい」
「いいです。私だって命が大切です」
「ふむ、そうかね。ああ、そうだ、我輩だって命が大事なのだよ。だからこそ、今回の戦はどうにかして切り抜けないといけないな」

 話が原点に戻ったような、まだずれたままのような、ただの世間話のように第五師団団長、バードナー=マルゴットはトレードマークである金髪の三つ編みをくるくると指に絡ませながら思案に更ける。常にやる気のない緑の双眸にようやく理性の色が灯ったのを見届けて、ルーウェンス=カーシャスは妙に疲れた両肩をほぐすように窮屈な肩当の中でぐるりと回した。
 戦巧者、バードナー=マルゴット。先の会話から本人は単なる留守番としか考えていなかったようだが、それでも騎士団団長であるセイレンを初め、この騎士団の中で作戦部に携わるものならば誰でも、彼のその防衛能力を高く買っていた。騎士兵以外の職を含むことを許さない騎士団の風潮が故に、どうしても防衛指揮や篭城戦などの難易度は高くなってしまう。選ぶ駒のレパートリーが少なければ少ないほど、やることが単調にならざるを得ず、騎士が故の高い突撃力を生かせない戦い方が不得手になってしまうのは仕方ないと言えた。
 もちろん、バードナーが執る戦術も、結局はその騎士の戦い方の域を出ない。同じ兵、同じ戦術を執るのならば、後は全て下準備や兵站、実際の指揮行動の話になってしまう。彼が長けていたのは、兵の動かし方もさることながら、守勢から攻勢に出るタイミング、もっと極端な話で言えば、戦場の空気を読むことに非常に長けていた。本人曰く、「直感的」とのたまうのだから、どういう理屈や理論でその号令を出しているのかが彼以外誰にも理解できなかったのが玉に瑕ではあるものの、彼の号令タイミングが結果的に最良であることが今までの経験で裏づけされているため、第五師団の誰もが、彼の指示に背かない。
 しかし、戦というのは決して、その当日の指揮だけで勝てるものではなく。そして、全てを直感的に、あるいは本能的に行ってしまうバードナーは当然兵站などについてはほとんどノータッチなわけで。バードナーが曲がりなりにも第五師団の師団長として慕われている裏側には、苦労人ルーウェンス=カーシャスの途方もない努力があることもまた、第五師団を含め騎士団上層部の誰もが知るところだった。

 そして、その万能スキルを余すことなくフル活用しているルーウェンスが未だに彼の下で副師団長の枠に収まっているかというと。つまるところ、バードナーの指揮に魅了されてしまった一人なのであって。
 バードナーが戦のことを考え、想定し、そして最も優れたルートを直感的に導き出す。その破天荒とも言える戦運びを間近で見て、心酔しない者などいないというのがルーウェンスの持論でもあった。
 しかし、今回の戦は、バードナーが愚痴を言い始める程、自分たちは前線に出ていない。今回の戦の舞台に立っているのは自分たちではなくて。
 
「しかし、団長。今回は団長が指揮を執らずとも、何とかなっているじゃないですか」

 ルーウェンスの言葉を受けて、バードナーは片目を開いてルーウェンスを見やる。
 そしてもう片方の瞼の裏に映る光景。長い菫色の髪の毛に、蒼く光る騎士剣。まだ幼さが残る体躯に根付く負けん気と、意思の根底に息づく騎士としての熱さは誰にも負けていない。戦はまだ巧いとは言えないが、それでも、彼女のその気迫に押されて、我が隊の中でも異を唱える者もそういなかった。
 あれで経験をつめば、おそらく戦に必要なものを全て一人でまかなえる人材になるのではないだろうか。そんなことを思い、バードナーはくつくつと口端で笑う。

「ん? ん、ああ。セニア嬢か。彼女もどうしてなかなか、よくやっているではないか」
「嬢って。相手が誰かわかってるんですか!?」
「どうしたね、ルーウェンス。マフラーがずり落ちているではないか。大事なんだろう? 夏でもつけているのだから」
「余計なお世話です、家訓なんです! いえ、だから、そうじゃなく! 私が言っているのはそうではなく!」
「ああ、煩いぞ、ルーウェンス。そんな大声を出さずとも我輩は聞こえている。セニア嬢がどうかしたのかね。ああ、何だ。ひょっとしてセニア嬢にほの字か? 何ぞ、また身分違いな道を往こうとするな。我輩はいいと思うぞ」
「あんた一回黙れ!」

 飄々と、言えば聞こえがいいものの、まったくぶれない声音で淡々とからかわれるのは存外に精神的にくるようで、ルーウェンスの魂の絶叫はそれなりに大きなものになってしまった。廊下の向こうで雑談をしていた騎士兵二人がびっくりして、こちらを伺っている。それに気づいたルーウェンスは、何でもないと言わんばかりに片手を振った。
 片や金色の三つ編み、片や目を覆いそうな橙色の長い前髪と濃紫のマフラーという、トレードマークとしては濃いモノで覆われている二人は、当然ながら騎士団の中では目立つ存在ではあった。

「……はぁ。もういいです、はい、詰め所戻りますよ。明日はセニア様がいないんですから、久しぶりに団長の指揮なんです。まだ作戦立案も済んでいないでしょう」
「立案なら終わらせたではないか。第一から第三連隊がびゅーんと走って、第四連隊が右翼からずばばーっとガード、第五、第六は予備隊として場内に待機。後は亜人どもの出方を見つつ、第一連隊を後方からずがーっとやれば、ほれ、もう充分だ」
「すみません、私ちょっとアルナベルツの言葉はわからないのですが」
「うん? 君は何を言っとるのかね?」
「いいから戻りますよ」
「……うむ?」

 自身の指揮を直感的と自負する人間相手に、立案能力など期待してはいけない。ルーウェンスは常にそう自らに言い聞かせてはいるのだが、たまにはと期待して何が悪いというのか。期待する自分が悪いのはわかっている。わかってはいるのだが、言葉の端に棘が含まれるのはどうか許してほしいと思う。

「……国境の……川沿いで……」
「ゲフェン……の……? あそこは……ヘイム……」

 廊下を折れ、もうすぐ第五師団の団長詰め所が近づいてきたときだった。小さな話し声のようなものが聞こえてくる。何だとバードナーと顔を見合わせたルーウェンスは、伝令か何かが詰め所前まで来ているのかと思って先に廊下を折れる。
 廊下の突き当たりにある、第五師団団長詰め所の扉の前には、思わぬ二人が立っていた。

「セイレン団長に、セニア様ではないですか。どうしてここへ?」
「あぁ、ルーウェンス殿。明日のことで、バードナー隊長に引継ぎの件で」

 敬礼と共に挨拶をしたルーウェンスに、セニアはセイレンとの話を切り上げてルーウェンスのほうを振り向いた。自分の名前が呼ばれたのが聞こえたのか、バードナーがルーウェンスの後ろからひょこひょこと三つ編みを揺らして現れる。

「わざわざ団長自らこんなとこへお出ましで? 言えば我輩のほうから行くというのに」
「はは、そう言うなバードナー。こういうのも仕事の一つだ。部下に仕事を任せようと思うのは、君も同じだろう?」
「我輩は仕事熱心ではないからな。相変わらずであるな、セイレンは」
「私から仕事を取ったら何も残らんよ。……と、私が話していては駄目だな。セニア」
「はい」

 セイレンはセニアに場を譲り、壁に背を預ける。では、と前置きをして説明を始めたセニアに対し、バードナーも最初の内はふんふんと相槌を打っていたものの、会話が一分を過ぎ二分を過ぎたあたりから、段々と緑の瞳から知性の色が抜けはじめてくる。しかし、セニアはそれに気づかず、事務的なことから今日までの戦況の状況などを話し続けていた。
 その光景を見て、セイレンは苦笑し、ルーウェンスは深々とため息をつく。横から失礼します、と声をかけて、ルーウェンスは完全に鎧の展覧物と化したバードナーを後ろに蹴やり、まだ幼いこの戦の総指揮官の前に立った。この戦場以外ではただのぐうたらの特性ぐらい、半年も一緒に過ごしてきたんだからいい加減理解してほしいと思うのは、きっと、彼の元でもう五年以上も戦場を駆けてきたからなんだろうなぁと、気苦労に絶えない証ともいえる年季のはいったため息を、付くのであった。
[PR]
by akira_ikuya | 2011-06-10 01:46 | 二次創作


<< Scene30 - 3 Scene30 - 1 >>